モバP「持たざる者と一人前」
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1: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:09:21.44 ID:FCK0uUJh0
モバマスSSです。 公式設定とはずれた勝手な設定があります。
またP視点に偏重しているのでアイドル成分は薄く、登場も遅いです。
それでも宜しければ、読んでいただけると幸いです。

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2: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:11:31.83 ID:FCK0uUJh0
□ ―― □ ―― □


 俺には何にもない。

以下略 AAS



3: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:12:06.52 ID:FCK0uUJh0
 だから俺だけは俺を信じてやれる。俺にはやりたいことがある。アイドルのプロデューサーってものが、俺はやりたいんだ。

 何を一人前にって思うかもね。俺みたいな半人前には無理な夢だって。俺だってそう思う。客観的に見ればその通りだ。

 けど、夢だ。だから諦めない。当然お袋と親父には反対された。それでも俺は曲げなかった。たった一度の人生だ、賭け金としては安いかもしれない。けれどそれでも博打を打ってみたかった。
以下略 AAS



4: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:13:20.97 ID:FCK0uUJh0
□ ―― □ ―― □



『うーん、駄目か……。まあそうだろうと思ったけど』
以下略 AAS



5: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:13:48.95 ID:FCK0uUJh0
「我々が売るべきものは顧客の夢だ。君の夢ではない」

 ……結局芸能プロダクションへの就職活動は二十連敗を超えたあたりで数えるのをやめた。だから別の道を探すことにした。だったら俺がプロダクションを作ればいいんだ、と。

 限りなく名案だと思った。別に大きなプロダクションである必要はない。俺と、アイドル一人だけのプロダクション。そんなちっぽけなものでも俺の夢は果たせるはずだって。
以下略 AAS



6: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:14:15.59 ID:FCK0uUJh0
『……もう一年ない、か』

 上京するとき、お袋と親父に誓った期限がある。それが四年だった。今年中に俺はプロデューサーにならないといけない。もし出来なければ……田舎に帰って家業を継ぐことになるのだろう。

 継げるものがあるだけ恵まれている方だ、なんて思いながら扇風機をつけると、ごろんと部屋に寝転がって天井を見る。
以下略 AAS



7: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:15:21.85 ID:FCK0uUJh0
『……“アイドル”だよなあ。やっぱり』

 こんな動画よりもずっとずっと、俺の脳裏には彼女の姿も声も鮮明に残っている。とても綺麗だった。もちろん容姿という意味でもある。そして心地の良い声の持ち主だった。だから惹かれたのだとは思う。

 けれどもそれが本質ではなくて、彼女にはどうしようもなく抗えないまぶしさ、説明のできない魅力があった。俺が決して持ち合わせることのないそれ故に、彼女は紛れもなく偶像《アイドル》なのだと思った。
以下略 AAS



8: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:16:11.11 ID:FCK0uUJh0
『うだうだ考えてないで、もう一回出かけるかな』

 それでもいい加減、何か成果を出したいと思っている。いや、そんなものは三年も前からずっとだ。一応、数少ない人脈を伝って小さなインディーズレーベルと懇意にさせてもらっている……と俺は思っているけれど、それは成果とはとても言えない。

 プロデューサーとしてのいろはさえ知らなかった俺に、ちょっとしたアドバイスをしてくれた人たちというだけだから。ちなみに二回目からは講義料を取られた。その分しっかりとは教えてくれたけれど。
以下略 AAS



9: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:17:02.03 ID:FCK0uUJh0
□ ―― □ ―― □




以下略 AAS



10: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:17:29.59 ID:FCK0uUJh0
 最初はスられたとも思ったのだけれどあんな型落ちもいいところのケータイ、金を貰ったって欲しがる人はいないだろう。だが俺にとってはかけがえのないケータイだった。あの動画を見れるのは、あのケータイだけなのだから。

(……こんなことなら早々に買い替えておくべきだったかな。ああ、ちくしょう)

 今更悔いても仕方がない。一縷の望みをかけて最寄りの交番へと向かいながら、俺は嘆息する。もっとも、あのデータをどうにかして残しておく術は限られていたと思う。型落ち過ぎて吸い出す手段はないだろう。
以下略 AAS



11: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:18:30.13 ID:FCK0uUJh0
(あの様子じゃ多分届いていなさそうだな……)

 そんな風に悲観的に考えつつ、とりあえず傍のパイプ椅子に腰を掛けた。それから三分ほど経つ。お巡りさんはまだ戻ってこない。

『やっぱり駄目そうだな……』
以下略 AAS



12: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:19:01.49 ID:FCK0uUJh0
(――この子しかいない)

 うわごとのように俺は思う。そして声を掛けようと思って……今自分のいる場所を思い出す。交番だ。ああ、くそ。流石にそこまでネジは吹っ飛んでいない。喜ばしいことだ、多分。でも、ちくしょう、この機会を逃すわけには。

 そんな葛藤を抱いている俺に彼女も気付いたらしい。ただ、単に先客として扱われたのだろう、軽く会釈だけを俺に向けてから覗き込むように交番へと入ってくる。
以下略 AAS



13: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:20:28.69 ID:FCK0uUJh0
 ……と、そんなことを思っているうちにふと気づいた。彼女の持っている物。とても、とっても見覚えがある。傷だらけの蒼いケータイ。折れ曲がったワンセグ用のアンテナと、汚れで黒ずんだどこかのご当地キャラのストラップ。

 ――あれは俺のケータイでは?

 好機だ、好機でしかない! そう思って声を掛けようとした瞬間、
以下略 AAS



14: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:21:00.56 ID:FCK0uUJh0
「うーん、もしそうだとしても一応規則ですからね。お手数ですけれど、確認と書類を作成しますのでご協力いただけますか」

「……まあ、いいですけど」

「申し訳ありません。ああ、そちらのお兄さんも。ちなみにそちらの方が持っている携帯電話で間違いないですか?」
以下略 AAS



15: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:21:35.34 ID:FCK0uUJh0
(……いや、これは完全にヤバい思考だ。ないな、うん、ない)

 そろそろ暴走し始めていたので理性で押さえつけ、落ち着かせるために交番の天井を見上げる。無機質な白の天井。防音材か何かかは分からないけれど、所々穴が開いている。あれは何のためにあるのだろうか。

 そんな取り留めもないことを考えていると、お巡りさんが二枚の紙ぺらを俺と、少女の方へ差し出した。
以下略 AAS



16: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:22:02.09 ID:FCK0uUJh0
『大丈夫ですか、これで。なんか不足とか……』

「ええと、特になさそうです。ご協力、感謝いたします」

『いえ、こちらこそお手数をおかけしたようで。ありがとうございました』
以下略 AAS



17: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:22:29.07 ID:FCK0uUJh0
『ありがとう。ケータイ、拾ってくれて』

 その言葉に、彼女は一瞬だけ足を止めて、そして軽くこちらを振り向いた。ちらりと目が合う。胡乱だと思っていたその目はじっと俺を見据えている。……なんてことだ、胡乱なんて、とんでもないじゃないか。

 彼女は微かな笑みを浮かべ、じっとこちらを見ていた。少なくとも俺にはそう見えた。そして射貫かれるような鋭い視線の中にあった、“良かった”なんていう安堵の色。
以下略 AAS



18: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:25:17.64 ID:FCK0uUJh0
本日はここまでになります。
また数日中には続きを投稿する予定です。
ありがとうございました。


19:名無しNIPPER[sage]
2019/08/01(木) 23:26:58.97 ID:6IDlGcD20
お帰り
7人目から読み返してくるかな


20:名無しNIPPER[sage]
2019/08/01(木) 23:46:34.39 ID:b9owjELd0
楽しみにしてます。


21: ◆v0AXk6cXY2[saga]
2019/08/01(木) 23:46:54.43 ID:FCK0uUJh0
書き忘れていましたがトリップを忘れて発行しなおしています。
以前は◆m03zzdT6fsでした。

>>19
ありがとうございます、覚えていてくださって恐縮です


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