【シャニマス SS】P「プロポーズの暴発」夏葉「賞味期限切れの夢」
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14: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/08/18(日) 02:27:42.74 ID:oj63shz20
「アイドルに憧れたのは、彼らに『ちゃんと』がなかったからだ」
 誤解を恐れずに口にした。アイドルに定まった正解はない。夢を叶えるために道なき道を進もうとする勇者だと、若い時分にはそう思えたのだ。夏葉は「わかるわ」と頷いた。

 どんぶりの最後の一口をすくって、俺は懐かしむように笑った。

「……まあ、昔話だな。思い返してみれば、俺も青年らしく葛藤していたらしい。新発見だ」

 努めて笑ったつもりだった。思いのほか暗い話になったので空気を和ませようとした。だがそんなことを考える必要はなかった。自然と笑えている。「そんな頃もあったなあ」と肯定できるくらいに葛藤は過去のものになっていた。

「でも今は違うよ。上手く言えないけど」

 先のプロポーズ妄想を思い出していた。高級レストランでドラマチックに告白をする。あれは実際妄想であったが、近い未来における予定であり、準備された計画でもあった。

 社長に頼み込んでレストランの席は確保した。白のスーツも新しく仕立てた。彼女の誕生石をあしらった婚約指輪を用意した。電波塔の管理会社にはあくまでイベントとして話をつけた。

 然るべき交際期間、ドラマチックな告白、給料三ヶ月分の婚約指輪。そういった『ちゃんと』をすっ飛ばして婚約が暴発してしまった。彼女の横顔に何か言い知れない感情が突き動かされた。そう考えると、あの婚約暴発も肯定できる気がした。

 俺は、ほとんど無意識的に右の頬を手でなぞった。

「アナタ、それ。右手」

「へ、右手?」
「そうやって右頬に触れるの。アナタのクセよね」
「……え、そうなのか?」

 二度驚いた。触れていたこと、クセになっていること。特に後者はまるで認識していなかった。はたから見ればなんとも奇妙なクセだろう。



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