21:名無しNIPPER[saga]
2019/09/09(月) 20:18:27.06 ID:W6D0RAKy0
 ぼんやりとそんなことを考えていたら、少女がこちらを見ていた。 
  
 あんまりに俺が気の抜けた顔をしているのが面白かったのか、含み笑いをしながら少女は言う。 
  
 「事務所に連絡、しておいた方がいいよ」 
  
 「え?あ……」 
  
 すっかり忘れていた。 
  
 朝からあんなに心を締め付けていた事柄だというのに。 
  
 というか、ここ数年でこんなにも仕事のことを忘れていた時間もない。 
  
 本当に俺はずっと仕事のことばかり四六時中考えていたらしいと、苦笑してしまう。 
  
 仕方ない。今日は学生時代以来の仮病を使うとしよう。 
  
 さっそくスマホを取り出してちひろさんに連絡を。 
  
 「メールでね」 
  
 少女が波を指差して悪戯っぽく今度こそ笑う。 
  
 そうだった。波音をBGMに仮病もなにもない。 
  
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