【鬼滅の刃】しのぶ「バレンタインデー」
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1:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:54:28.05 ID:4LSZK8eX0
今日の午後にホワイトデーSS載せたいので、その前日譚として投稿します

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2:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:56:26.41 ID:ViqLDuZYO
「今年も冨岡くんにチョコあげるの?」

 木曜日の夜。ご飯を食べ終わった後、姉さんが聞いてくる。小首を傾げる姿が可愛らしい。歳上の女性に『可愛い』というのは違和感があるが、姉さんは特別だ。今だって、私の返事を心待ちにしている姿が可愛くて愛らしい。


3:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:57:08.27 ID:ViqLDuZYO
「しのぶ?」
「あ、そ、そうねぇ…」

 あまりにも返事がなかったからか、姉さんが聞き直してきた。いけないいけない、とてもではないが実の姉に見惚れていてボーッとしていたのがバレるのは恥ずかしい。


4:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:57:38.36 ID:ViqLDuZYO
「もちろんあげるわよ。あの人にあげるのなんて私くらいでしょう?」

 姉さんの言う『冨岡くん』とは、私の高校(姉さんの勤め先でもある)キメツ学園の新任体育教師、冨岡義勇さんのこと。とは言っても、どちらかと言えば私にとっては幼馴染みだ。姉さんと同い年の新任である冨岡先生は私とそう年齢は変わらない。今は一人暮らしをしているけれど、彼の実家は隣にあって、今でもお姉さんとその旦那さんが住んでいる。



5:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:58:09.63 ID:ViqLDuZYO
「…私も…作る」
「あら♪カナヲも炭治郎くんに作るのね♪」

 珍しく顔を赤くしながらコクコクと頷いているのは妹のカナヲ。カナヲはカマドベーカリーの炭治郎くんに渡すらしい。
 あまり感情を表に出すことのないカナヲが好きになったのは、真っ直ぐで嘘のつけない好青年だ。


6:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:58:47.23 ID:ViqLDuZYO
「竈門くんはモテそうだから大変ね…それに引き換え冨岡さんは…はぁ…いつになったらちゃんとするんですかね?」

 妹が甘酸っぱい恋をしている横で、自分は腐れ縁の幼馴染みにチョコを渡すのかと思うとため息も出てくる。原因の半分は自分にもあるのだが、そもそも私は『しょうがなく』冨岡さんにチョコをあげるのだ。それがなければそもそもチョコなど作らなくて済むのに。


7:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 06:59:21.65 ID:ViqLDuZYO
「冨岡くんが?」
「えぇ、この間だって始業式でネクタイがぐちゃぐちゃだったのよ?私が見つけて直したから良かったようなものの、あのまま式に出てたら教師失格よ」
「ドジっ子…」

 確かに冨岡さんは顔はいい。だけど、それを台無しにするぐらいの残念さを持ち合わせている。カナヲが言うようにドジっ子と呼ばれて許される年齢はとうに過ぎているのに。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:00:00.26 ID:ViqLDuZYO
「あらあら、あれ直したのしのぶだったのね」
「姉さん気付いてたの?」

 だったら直してあげればいいのに。

以下略 AAS



9:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:00:35.16 ID:ViqLDuZYO
 幼馴染みのよしみで、たまに様子を見に行くけれど、彼の部屋はそれはもうひどい有様だった。散らかっているというよりは物がない。本当に何もない。同じジャージが三着だけかかったラック、洗濯機、布団しかない部屋を見た時には唖然とした。
 冷蔵庫もなかった。一体食事をどうしているのかと聞くと。コンビニで済ませるそうだ。その日のうちに彼のお姉さん…蔦子さんに連絡し、三人で家電を買い揃えたことは忘れられない。蔦子さんにはこちらが申し訳なくなるほどの謝罪とお礼を言われた。どうしてこんなにしっかりした人の弟がこんなことになるんでしょう。


10:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:01:23.37 ID:ViqLDuZYO
「姉さん、冨岡先生の家に行ってるの?」
「あら?カナヲは知らなかった?」
「だってあの人!本当に生活力ゼロなのよ!?」

 せっかく家電を買い揃えても、彼自身はそれを使わない。というよりは使えない。だからたまに私が行って料理の作り置きをしたり、部屋の掃除をしたりする。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:02:09.32 ID:ViqLDuZYO
「本当…あんなんじゃ誰もお嫁さんに来てくれないわよ…」

 しょうがないからたまになら、彼の好きな鮭大根でもお裾分けしに行ってあげようか。そんなことを考えていた私に姉さんが爆弾を落とした。


12:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:02:41.30 ID:ViqLDuZYO
「あら?冨岡くんはモテるわよ?」
「は?」

 何の冗談でしょう。姉さんらしくない。

以下略 AAS



13:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:03:18.19 ID:ViqLDuZYO
「な、何の冗談?冨岡さんがモテるわけないでしょ!?」

 何故か私は叫んでいた。どうしてこんな面白くもない冗談に動揺しているんだろう。

「だって顔はいいし…」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:03:47.10 ID:ViqLDuZYO
「そういうところも、人気なんだって」
「は?」

 カナヲは何も悪くないのに、ついつい語気が荒くなる。

以下略 AAS



15:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:04:17.84 ID:ViqLDuZYO
「ひょっとして…冨岡くんのこと好きなの!?」
「はぁ!?」

 姉さんがキャーっと嬉しそうに叫ぶ。可愛い。いや、可愛いけれど!?



16:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:05:00.35 ID:ViqLDuZYO
「ち、違うわよ!そんなんじゃ…」
「じゃあどうして冨岡くんのネクタイを直すの?」
「そ、そんなの…怒られたらかわいそうじゃない…」
「部屋に行ってまで世話をするのは?」
「そんなの、私がなんとかしないと死んじゃうわよ!?」
以下略 AAS



17:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:05:30.99 ID:ViqLDuZYO
 どうするべきか急にわからなくなった。私が冨岡さんのことを好き?そんなわけない。そんなわけ…。
 姉さんが「少しイジワルしすぎたかしら」と小声で言いながら、おやすみと言って自分の部屋に戻っていく。私はとても眠れそうにない。



18:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:05:58.18 ID:ViqLDuZYO
 おかげで今日は寝不足だ。バレンタインは次の月曜日。土日で準備するためには今日決めなければならない。いっそ辞めてしまおうか…。いや、今まで毎年あげていたのに急に辞めてしまったら、それはそれで私が冨岡さんのことが好きで、意識しすぎているように見えないだろうか。



19:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:06:37.95 ID:ViqLDuZYO
「うーん…」
「どうしたんですか?しのぶ先輩」
「…ん、あぁ、ごめんなさい。何でもないのよ」

 後輩のアオイに声をかけられる。寝不足だから仕方ない。断じて冨岡さんのことで悩んでなんかいない。


20:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:07:04.95 ID:ViqLDuZYO
「今日の放課後、お店に寄ってもいいですか?」
「えぇ、いいけれど、どこに?」
「ちょっとチョコレートを買いに」

 ほら、バレンタインですし。と続けるアオイ。この子も誰かに本命チョコを贈るのだろうか…具体的には、野性的なあの人に…。
以下略 AAS



21:名無しNIPPER
2020/03/14(土) 07:07:34.60 ID:ViqLDuZYO
「伊之助くんですか?」
「ぎ、義理チョコですよ!義理チョコ!」

 義理チョコ?そうよ、義理チョコってはっきりわかればいいんじゃない!
 今まで、冨岡さん一人に渡していたから本命だと誤解されるたのよ!それなら、本命のチョコは別に用意して、冨岡さんには義理だとわかるチョコをあげればいいんだわ!


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