11:名無しNIPPER[saga]
2020/03/25(水) 23:38:04.34 ID:CTG1QIS00
  
  
 「…ところで任務の話をしておきたい。この村で鬼が出没している件は既に聞いているな。」 
  
  
 それから冨岡さんは懐から新聞を取り出した。見ると新聞にはこの村で起きた惨殺事件についての記述があった。 
 事件が起きたのは昨夜のことだ。 
  
  
 「殺されたのはこの村に住むお婆さんだ。産婆だったらしい。」 
  
  
 産婆といえば妊婦さんの出産時に手助けしてくれる助産婦さんのことだ。 
  この小さな村では産婆はお婆さん唯一人だけとのことだ。 
   
  
 「それで遺体を調べたがかなり食い散らかした跡があった。 
 しかもかなり食べ残していたようで痕跡からして恐らくは初めて人を喰ったのだろう。」 
  
  
 事件の惨状を淡々と語る冨岡さんの話を聞いて先程まであったはずの食欲がすっかり失せていたことに気づいた。 
 当然だ。こんな話を聞かされて食事を取ろうなど思うはずもない。 
 それにしても年配のお婆さんを襲うなんて卑劣な鬼だ。許せない! 
  
  
 「まだ事件が起きてから時間が経っていない。恐らくは鬼もそんな遠くには行っていないだろう。 
 俺はヤツが潜みそうな場所をしらみ潰しに探す。お前もメシを食ったらすぐに探しに出てほしい。」 
  
  
 そう促すと冨岡さんは早々に店から立ち去った。さすがは柱だ。 
 鬼の討伐を第一に考えているだけあって行動が迅速だ。 
 ちなみに冨岡さんの食器には頼んだであろう鮭大根の定食を米一粒残すことなく綺麗に置かれていた。 
 ふむ、これが冨岡さんの好物なのかはわからないけど美味しいことには間違いなさそうだ。 
 俺も同じものを食べてすぐに鬼の搜索に加わろう。 
 腹が減っては戦は出来ぬだ。食欲が失せたなんて言っていられない。 
 とにかく無理矢理でも腹に飯を入れて力をつけなきゃな! 
  
  
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