17:名無しNIPPER[saga]
2020/03/25(水) 23:47:37.90 ID:CTG1QIS00
「経緯はわかりました。けど何故自首しなかったんですか!これが許されるべき行いでないことはわかっているはずだ!?」
「わかっている!女房も警察に自首すると言っていた。けど…お腹の子がもうすぐ生まれるんだ…」
すべてはお腹の子のためだと…
そうか、そういうことだったのか。この夫婦は生まれてくる子の誕生を望んでいる。
けれど女将さんが自首すればどうなるだろうか。
事情を知らない警察に行けば太陽の光によって身体が消滅してしまう。
そうなればお腹の子は助からないだろう。
「我が儘なお願いかもしれないが頼む!お腹の子が生まれるまで待ってくれ!」
それがこの夫婦の望みだった。
その願いを聞いた上で俺はもう一度女将さんの顔を覗いた。涙を浮かべながらお腹を摩っていた。
その光景はまだ家族が生きていた頃に母ちゃんが生まれてくる弟妹を勞っている姿と酷似していた。
生まれてくる子を想う気持ちは痛いほどわかるよ。
俺だってさっきまで女将さんのお腹の子の心音を確かめていたんだ。けどそれとこれとは話が別だ。
「それなら聞かせてください。お婆さんの死についてどうやって報いるつもりですか。」
俺は臆することなく二人に刃を向けながら問い質した。
鬼狩りの剣士としてこれだけはどうしてもハッキリとさせる必要がある。
いくら女将さんに殺意がなかったとしても現にお婆さんは亡くなってしまった。
それもお腹の子を取り上げようとした人だ。
俺は面識ないがお婆さんの死を蔑ろにするなどどれほど退っ引きならない事情があろうと絶対に許されないことだ。
「…罪は償います…私たち夫婦が必ず…」
決意した目で二人はそう答えてくれた。その言葉には嘘偽りの匂いは感じられない。
この言葉は信じられる。だけど…
ここにいる鬼狩りは俺だけじゃない。冨岡さんがいる。あの人は鬼殺隊の柱だ。
柱ならば鬼とわかれば即斬りつけるだろう。
以前に産屋敷邸に呼びつけられた時に冨岡さんは俺たち兄妹を庇ってくれた。
あの時は禰豆子が人を襲わないと証明出来たからこそ信じてもらえたんだ。
けど今回は状況が大きく異なる。女将さんは既に人を襲ってしまった。
人の命を奪うという取り返しのつかない過ちに及んでいる。
状況がどうであれ人を襲った鬼とわかれば女将さんはすぐに斬られる。
こうなれば見過ごすか?いや、それも駄目だ。
ここで冨岡さんから逃げられたとしても他の隊士が女将さんを斬る結末に変わるだけ。
それに女将さんは既に人を襲ってしまった。
ここで逃がしたら本能のままに人を襲う悪鬼と成り代わる可能性もある。
俺は鬼殺隊の隊士だ。これ以上の被害者が出ることだけは絶対に避けなければならない。
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