7:名無しNIPPER[saga]
2020/03/25(水) 23:33:17.47 ID:CTG1QIS00
「ハァ…ハァ…ようやく着いたぁ…」
鱗滝さんの家を出てから数時間の時が過ぎた。出発した時はまだ昼間だったのに今やあたりはすっかり日が暮れて真夜中だ。
それにしても…我ながら情けない…息が上がるし体力の消耗が激しいや…
やはりまだ身体は不調のようだ。
先日の無限列車の戦いで受けた傷はまだ十分には癒えていないらしい。
幸いにも傷口が開いてはいないがこの身体で戦闘になれば五体満足ではいられない。
そう思うと冨岡さんに助っ人を依頼してくれた鱗滝さんの判断は正しかった。
うん、やっぱり俺の育手の師だ。ちゃんと見てくれているんだな。ありがとうございます。
ところで暗くなったのなら丁度いい。俺は周囲に人がいないのを確認すると背負っていた木箱を下ろした。
「さあ禰豆子、出ておいで。」
そう囁くと木箱の蓋がひとりで開けられた。
そこから麻の葉文様の着物に市松柄の帯を締め黒くて長い綺麗な髪を結び額にしてそして口には竹の口枷という大きな特徴をした少女が姿を現した。
この子は俺の妹の禰豆子。今となっては唯一の肉親だ。
妹は鬼と化したが人を襲うような悪鬼ではない。だが他の鬼と同じく陽の光を浴びれば消滅してしまう。
そのため昼間はこうして木箱の中に入りひたすら眠ることで鋭気を養っている。
だからといって実の妹を木箱の中に閉じ込めたままにするわけにはいかない。
動けるようになる夜になるとこうして木箱の中から出してあげる必要があった。
「う…うぅ…」
寝起きのせいか禰豆子はぼんやりとした寝ぼけ眼な状態だ。
無理もないか。妹は人を喰らわないがそのためにかなりの睡眠を取っている。
恐らく睡眠を多く取ることで人喰いの本能を押さえ込んでいるのだろう。
そんな禰豆子の手を取ると俺は再び歩みだした。
ごめんな禰豆子…兄ちゃんいつも苦労ばかりかけて…
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