38:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:59:34.61 ID:O0jAO63X0
 ひなた「10年前に貯めておいた在庫もあとわずか……それが売れたら、もう兄ちゃんが遺してくれたものは村から一つ残らず消えてしまう」 
  
 ひなた「長老、みんな……本当にこれで良いと思ってるのかい? それでも育吾郎さんを、兄ちゃんと同じ目に遭わせるのかい?」 
  
 ひなた「あたしの兄ちゃんが命を投げ打って守りたかった村は……こんな村だったのかい?」 
39:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:00:16.21 ID:O0jAO63X0
 長老「儂が今日まで生きてきたこの美里恩村の良きところは、村人が皆博打などを好まぬ堅実な働き者ばかりなところじゃ」 
  
 長老「人が未来を見通すことはできぬ。じゃが若者の未来を信じることは愚かな賭けじゃろうかのう」 
  
 村人たち「……」 
40:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:00:56.11 ID:O0jAO63X0
 ――芙美台山麓 
  
  
 エミリー「……」 
  
41:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:01:32.22 ID:O0jAO63X0
 エミリー「大丈夫です。私が必ず、育吾郎さまをこの村へ連れ戻してみせます。どうか見守っていてください」 
  
 ひなた「だけども、あたしにもエミリーちゃんの力になれることがないかと思って……それで、これを」 
  
 エミリー「これは……お守りですか?」 
42:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:01:58.21 ID:O0jAO63X0
 まつり「いや、それだけはさせんのじゃ」 
  
 ひなた「あ、あなたは?」 
  
 まつり「ふふっ。余は通りすがりの貧乏旗本の三男坊、徳田松之助なのじゃ。心配せんでも、エミリー殿の身は余とこちらの祈祷師の先生が守るのじゃ」 
43:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:02:39.19 ID:O0jAO63X0
 ――芙美台山、中腹 
  
  
 エミリー「おや?」 
  
44:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:03:12.07 ID:O0jAO63X0
 人骨たち「カタカタ……!」ブンッ 
  
 エミリー「くっ、どうか鎮まりください。私はあなた方に危害を加える気はありません」 
  
 エミリー(可哀想に。成仏できず、ずっとここを彷徨っておられるのですね……おや?) 
45:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:03:41.83 ID:O0jAO63X0
 とある人骨「カタ…カタ…」 
  
 エミリー(ひなたさんのお兄さまが、みなさんを堰き止めてくださっている……?) 
  
 エミリー「ありがとうございます。みなさんの御霊は、のちほど村の方々が必ず供養してくださるはずです。それまでどうか待っていてください」タタタ 
46:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:04:12.40 ID:O0jAO63X0
 ――芙美台山、最深部 
  
  
 エミリー「……」 
  
47:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:04:41.18 ID:O0jAO63X0
 エミリー「私をうろたえさせようとしても無駄です。力を誇示して人を弄び跳梁跋扈す悪しき鬼――私はあなたのような卑怯者の言葉を聞く耳など持ちませんので」 
  
 エミリー「それとも、私に倒されるのがそんなに怖いのですか? 人を喰らう鬼が、私のような者を恐れる理由などないはずですが」 
  
 桃子「ちぃ……小娘の戯言と放っておけば好き放題ほざきおって。定められた事柄は一つだけ……あの村は儂に飼い慣らされることでしか存在できぬ。今までもこれからもな!」 
48:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 17:05:17.83 ID:O0jAO63X0
 エミリー(迂闊でした。これは想定外です) 
  
 エミリー「くっ……!」ヒュイン 
  
 桃子「どうした? 躱してばかりではないか。その立派な刀でひと思いに斬ってしまえば良かろう。儂は構わんぞ? こんな玩具、替えならいくらでも効くのだから」 
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