王馬「大変だ!オレが行方不明になっちゃった!」
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11: ◆DGwFOSdNIfdy[saga]
2020/04/05(日) 22:34:28.66 ID:WE0jVB9X0
僕は何度も頭を壁に叩き付けられた。何度も何度も何度も何度も何度も。当たり前だけどとにかく痛かった。それと、生温かくてぬるりとしたものが顔を舐めるように伝っていく感触が気持ち悪かった。

僕自身が僕の形をちゃんと留めているのかいよいよ心配になってきた頃、王馬くんは不意に手を止めた。

王馬「ちょっと思ったんだけど」

赤松「うん」

王馬「薔薇が宇宙に似ていたたとしても、それは宇宙そのものとは言えないよね」

王馬「鯛中鯛だって単なる骨の一部じゃん。しかもそこまで鯛っぽくもないし」

赤松「そう?」

どうやら物証を得るより先に、人間の中に人間はいないという結論に達したらしい。どうせならこんな馬鹿な事をする前に気付いて欲しかった。それとも態となのか。

王馬「最原ちゃーん、生きてるー?」

最原「……」

王馬「ただのしかばねのようだねー」ポイッ

最原「」ドサ

王馬くんは空になったペットボトルを捨てるような何気無さで僕の身体を放った。

頭痛が酷くてしばらく自力で立ち上がれそうにもなかったので、狸寝入りを決め込んで休む事にした。


赤松「うーん…私は私を探そうだなんて思った事無いからなあ。王馬くんの力にはなれないかも」

王馬「赤松ちゃんは自分を見失ったりしないんだね。だったらキミの事を教えてよ」

王馬「本当のキミの事を」

赤松「……面白い話じゃないけど」

王馬「構わないよ。つまらなくない方がいいのは確かだけどね」

赤松「期待はしないでよ」

王馬「はいはい」

赤松「…お母さんが音楽教室の先生をやってたからかな、物心付いた頃にはもうピアノに触ってたと思う。他のものにはあんまり関心を持てなかったけど─持てなかったから?ピアノを弾いてる時だけは本当に楽しかった」

赤松「でも続けていく内に色んな事があって、苦しさも味わうようになってさ。それまでずっと楽しいって気持ちだけで続けてきたから、途端に嫌気が差したの」

赤松「そうなって初めて他の事してみたいと思ったんだ。ピアノを弾かなくなって時間が出来たのと、何より退屈だったから」

王馬「そこでダンガンロンパにハマったの?」

赤松「うん。最初は映画だったな。クラスのみんなが見てたから私も見ようかな、ぐらいの軽い気持ちで。初めての映画だっていうのもあって凄く衝撃的だった」

王馬「それまで映画すら見た事無かったんだ」

赤松「関心を持てなかったからね。今思えば単なる食わず嫌いだったなあ」

王馬「なるほど。結局、ピアノは他のものと違って食わず嫌いする余地が無かっただけだったと」


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