2: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/04/19(日) 22:03:26.68 ID:nO0X6WpI0
  
 〇 
  
  アンコール。 
  アンコール。 
  アンコール。 
  
  舞台袖にまで響く、何百何千、何万もの声が会場を揺らしている。 
  スタッフさんたちは相も変わらず動き回ってくれていて、私の周囲では衣装さんやメイクさんが最終調整をしてくれている。 
  
  衣装さんに、メイクさん。 
  機材を扱ってくれているスタッフさんに、会場の内外で様々に私のライブを助けてくれているスタッフさん。 
  思いつく限りのお仕事を挙げてみても、途方もない人数の人たちが、私たった一人のライブのために、力を尽くしてくれている。 
  
  ああ、それと。もう一人。 
  
 「スポーツドリンク渡し係さん」 
  
 「……なにそれ」 
  
  私の隣にいつの間にか立っていたプロデューサーは、ストローの挿してあるスポーツドリンク片手に、きょとんとした顔でこちらを見る。 
  
 「んーん。こっちの話」 
  
 「よくわからないけど……はい、これ。いつもの」 
  
 「ん。ありがと」 
  
  手渡されたそれに口をつけ、ごくりと飲み下す。 
  爽やかな甘さが喉を駆け抜けて、ぱちんとスイッチが入ったような感覚になった。 
  
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