8:名無しNIPPER[saga]
2020/04/25(土) 20:47:07.14 ID:63FTC/uF0
  
  『――ありがとうございましたっ!』 
   
 三人が声を揃えてお辞儀をします。 
 上げた額に流れる汗が鮮烈な照明に輝いて、加蓮はびくりと身体を震わせました。 
 司会者から振られる話に、肩で息を繰り返しながら辿々しく相槌を打つ姿が、 
 加蓮には何だか急に底知れぬもののように感じられたのです。 
  
  
 出番を終えた少女達がスタジオの中央を譲るのを見届けて、 
 加蓮は携帯テレビの電源をかちりと切りました。 
 その瞬間に賑やかな音は途絶え、ちょうど吹いていった秋風が窓ガラスをかたかたと鳴らします。 
  
 そこに映っているだろう姿を見たくなくて、加蓮は頭から布団を被りました。 
 ふわり膨らんだ空間から空気が抜けていって、やがて布団が心地良くのし掛かってきます。 
   
  
 いいな。 
   
  
 そう呟こうとして、実際に口は動いて、けれど言葉にはなりませんでした。 
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