アルコ&ピース酒井「Black Savanna」
↓ 1- 覧 板 20 
12: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:00:44.18 ID:z3oD1mZbo
 突然思い出すのは、あの唐突な揺れ。 
 そしてまたあの時みたいに、進行方向の信号が赤に変わる。今度は揺れたり、躓いたりする事こそなかったけど、やっぱりなんか変な感じがしてビルの方を向く。 
 まさか、な。そんなわけないだろ。 
 そう期待したけれど。 
  
 「いや、嘘だろおい」 
  
 居るわ。 
 いや、作り話の極地かよ。いるじゃねえか、また。あのガキが。手術着のガキが。なんだ手術着のガキって、何をテーマにして有名になろうとしてんだ。 
 そのガキはやっぱり遠くで、ビルの前にいて、何だかよく分かんねえけどなんでかガキだってことはよくよく分かった。 
 それはオレの視力がマサイ族並とか、そう言うことではない。『なぜか分かった』のだ。 
  
 ガキはオレと目が合っている。 
 何かを訴えようとしている。 
  
 それとも、オレを狙っている? 
  
 (計画は、進行している) 
  
 耳を掠める誰かの声。聞き間違いか、風のさざめきか分からない。誰が言っているかもよく分からない。 
  
 (我らは例えるなら渡り鳥、しかし終ぞ見つけたのだ。安息の地を) 
  
 どこかから聞こえた声。これはオレの妄想であってくれないかと思ったのだが、どうもそうでは無いらしい。 
 頼む、オレだけでは無くて、誰かが、これに気付いていてくれと願ったけれど、そんなもん叶わない。人通りも普段より少ないし、誰彼も余裕はない。それ以前に、普段から他人に興味を抱くことなんてゼロだろう。都会なんてそんなもんだ、すれ違う誰かの事なんてそんなに真剣に考えたことも無いだろう。 
  
  
 ……その鳥が何処に行くかなんて、この街では誰も気にしていないから。 
31Res/54.96 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20