アルコ&ピース酒井「Black Savanna」
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2: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:44:45.73 ID:z3oD1mZbo
至極真面目な顔して。
真っ直ぐオレのこと見て。
そうやって、言ったんだ。まさかそんなこと言う人がオレのUFO目撃談全否定とか思わなくって、オレもつい笑い声を漏らしてしまった。
趣味が映画鑑賞、サイエンス・フィクションを愛した、虚言と夢を織り交ぜた話術を得意とする平子さんらしからぬセリフだったと、オレは勝手に思ってた。
3: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:46:19.84 ID:z3oD1mZbo
最終的に、地元のお友達に電話して裏取ったからガチってことでそれはいいんすけど、けどあの時の熱量マージでヤバかったからね。音声、聴き直した方がいいよ自分で。
あの人めちゃくちゃ喋りやすいいい人でしたね。つか、友達とか居たんすね。へー、いがーい。
「それ誰が知ってんすか」
4: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:47:57.97 ID:z3oD1mZbo
あれ、なんかおかしいな、と思ったのはそんなに前じゃない。有楽町を牛耳ってた頃のアンタはそこまでおかしくは……いや、うそ。あの頃から言っちまえばオレら、どっちもかなりイカレてましたわ。
ラジオ終わりそうつって、終わらず降格でなんとかなって、けどやっぱ終わったりして、なんだかんだ合ったあの頃。リスナー含めてオレら、相当狂ってた気がすっけど、源流は未だに変わってねえもんな。や、それは良くって。
……そうだ、きっとこの二〜三年だ。ずっと兆候はあった、ような気はしてっけど、それが確信に変わるのにあんまりにも時間がかかりすぎてしまって、むしろただの虚言なのかどうか、良く分かってなかったのがいけねえんだろうな。
5: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:49:13.93 ID:z3oD1mZbo
「何、何なんその計画は」
ああもう、脇道に逸れてばっかし……リスナーと一緒に振り回されながらオレ、その話なげぇなとか、これそもそもオチあんのかなとか、大体この話なんなんだよとかそんな事を思いながら対峙していた。
つか、出だしからして「その日は頭くらいのサイズの雹が降って、玄関開けたら首切られた鶏が十羽並べられてる」とかバカいかちぃ書き出しで、世にこんな小説があってたまるかとオレに言わせたがってるようだった。
6: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:50:24.98 ID:z3oD1mZbo
ある日の、いつもの東京。
やたらに人が歩き回る、コンクリートの檻。生気のない顔で歩くリーマン連中なんか、懲役五百年の労働刑にでも科せられてんのかって、視界に入れただけでもう不安になる。
けど、どことなく前に比べ人は少ないような気がする。
なんでも、やべーウイルスがどうこうで、という事だったけど、詳しいことは何回テレビ見ててもよく分かんなかった。本格化し始めるのは、さらに少し時間が経った頃だ。
街はそれなりに人が出ているが、人の減少に焦って、ビラ持った人達が何かを配っていた。居酒屋のとか、人探しのとか。
7: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:52:34.72 ID:z3oD1mZbo
「結構この辺歩いてるつもりだったけど、知らねえこといっぱいあんな」
誰とも言わずひとり呟く。オレにだってそんな日くらいありますわ。
歩いている道の先の方で、信号が点滅して青から赤に変わった。車道の信号と一緒に全てが赤になる。人と車の入れ替わり、全ての物体が動かずにピタリと止まるあの瞬間。ほんのわずかに世界が静まるあの瞬間。
8: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:53:54.22 ID:z3oD1mZbo
「てのがあって」
「怖。それよく何もなかったな」
と言うのを数日後、近況報告的に平子さんに言った。とはいえさすがに面白おかしく転がるような話でもないからきっと公共で喋ることはねえんだろうなと思った。オフレコってやつだ。
9: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:56:02.91 ID:z3oD1mZbo
「白い、ガキ……」
言葉が途絶える。余りにも不意に。
何でかは分かんねえんだよなぁ。
この人、今何を考えてるんだろ。どっか遠くの方を見ながら、平子さんがなんか考えてるっぽかった。いつものあれこれ試行錯誤してる時の顔だ。そう言うのを邪魔すんのは野暮ってもんだから、言う言葉無い。
10: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:57:07.30 ID:z3oD1mZbo
なんも出てこねえ、いや、なんかしらは出てくんだろ、と自分を鼓舞してあの時の映像を脳裏から引っ張り出す。
あんなに遠かったのに、どうしてそんな事が分かったんだろう?
理由が分からねえ。けど、オレは思い出せてしまった。根本的な原因を解決するような理由すらも分からねえが、とにかく考える事が重要らしいので考える。
ええっと。
11: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 19:58:43.41 ID:z3oD1mZbo
三月。
オレらはまだ、前半はなんとか普段通りにやれていた。けど、それでも感染対策だ、なんだっつって後半のスケジュールから段々と白紙になりだした。
メディアも大変よ、ほんと。人気稼業ってのはこう言う時しんどい。普通の人と同じように、仕事できるわけじゃねえから。
いかなラジオスターとて残念なことにオレもただの人の子、対策つっても簡単なことしか出来ねんだけど。
口元にマスクってのは芸能人のトレンドっしょ、とかなんとか、普段からやってっけど余計色んなこと気を付けなきゃなんねえなと思った。
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