13:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/11(木) 19:50:23.56 ID:fM9nM/xA0
空想。それらをまとめて括る言葉。十時さんと一緒にハンカチで床を拭きながら、俺は十時さんのプロデューサーが彼女を迎えに来るまで、白雪姫について、シンデレラについてずっと考えていた。
全部、空想の文学に記されたことだ。毒の治療には解毒剤が必要で、カボチャに向けて何事かを唱えてみたって、この世界を支配している質量保存の法則を破れはしない。だから、問題はそこじゃない。
『……あなたの望みは、なぁに?』
思い出す。何を。誰を。謡うように問いかけられたこと。ちとせのこと。
いつだって彼女の言葉は、何かを物語るようだった。
いや、多分それも、正確じゃない。
ゲームマスタ−。頭の片隅からこぼれ落ちた言葉が、脳裏に砕けて食い込んでいく。
テーブルゲームの進行を恙なく行うために、描いたシナリオを遂行するために配置された役割。多分そっちが近いんじゃないかと、そう思った。
魅入られている。呆れているのかそうでないのか、いつも通りの三白眼と仏頂面で十時さんを迎えに来た彼女のプロデューサーを、その背中を見送りながら、考える。
俺の望みのことを、今も不透明の海の中で透明になって漂い続ける、ちとせのことを。
そして、キスで目覚めるような、陳腐でありふれた物語のことを。
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