10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/06/26(金) 00:33:18.19 ID:pCrOcsWZO
「あれ? 式、君だけかい? 橙子さんは?」
「帰った」
コンビニでアイスを買って帰ると、伽藍の堂には式だけが居て、何故か眼鏡姿だった。
「その眼鏡はどうしたのさ?」
「トウコに借りた」
珍しく思って尋ねると、どうやらその眼鏡は橙子さんの物らしく確かに見覚えがあった。
「たしかその眼鏡をかけると、魔眼の力が弱くなるんだっけ?」
「ああ。つまり、今のオレは普通の人間だ。どうだ、幹也? オレは普通に見えるか?」
「いや、いつもと違うから逆に新鮮に見えるよ。それはそれでありだと思うけどね」
「ちぇっ。せっかく無理言って借りたのに」
率直な意見を口にすると式が拗ねたので、すかさず好物であるハーゲンダッツを出した。
「ほら、ストロベリー味だよ」
「要らないって言ったのに」
「でも、君はこれが好きだろう?」
「オレは冷たい物が嫌いだ」
それはきっと嘘ではないのだろう。
式は冷たい物が嫌いで甘い物はわりと好き。
しかし冷たくないアイスなど存在しないし、わざわざ砂糖水を舐めるほどに甘い物が好きなわけでもない。そんなところだと思う。
それでも式がアイスを食べるのは、きっと。
「ほら、早くしないと溶けちゃうよ」
「チッ……急かすなよ」
僕が買ってきたアイスが溶けてしまうのか忍びなくて、だからこうして食べてくれる。
そんな式の素朴な優しさに、僕は癒される。
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