千早「私が歌う理由」
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17:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/01(土) 18:25:52.42 ID:nI3QwB+a0
『誰にも、他人に言えないことの一つや二つはあるものです。千早にもあるのではないですか?』

そう四条さんに言われて、思わず優のことを思い浮かべる。
その時、後ろで水風船の割れる音がした。

振り返ると小さな男の子が泣いていて、姉らしき女の子が男の子を慰めている。

千早(思い出した。)

あの時もそうだったっけ。

あの子は水風船を落として泣いていた。
私が歌を歌ってあげたら泣き止んで笑ってくれたっけ。

どうしてこんな大切な思い出を忘れていたんだろう。
私だけはあの子のことを覚えておくんだって決めてたのに。
優との大切な思い出は全部覚えているつもりだったのに。

思い出せなくなってしまったら・・・
忘れていることすら忘れてしまっていたら、私はどうすればいいんだろう

眩暈がする。自分の今立っている場所がひどく頼りないものに感じる。

歌だけは、歌だけは歌い続けないと。あの子との思い出の私の歌だけは。


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