1:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:11:57.44 ID:HnCLjJSc0
教室の窓から見える曇り空のせいでしょうか。
あるいは教室内で今まさに行われている現代文の授業のせいでしょうか。
それともその両方でしょうか。
教科書を抱えてむむむと小さく唸るアーニャの眉は今日も今日とて下がり気味。
いくらにこにこ笑顔がトレードマークの彼女とは言っても、
未だ苦手な科目の一つである現代文の授業ばかりは、
やっぱり如何ともし難いところはあります。
いつもなら彼女の座る窓際の席からいっぱいに広がる青空を眺めて、
遠い宇宙の果てにまで想像の翼を広げ、
束の間の気分転換を図ったりするのです。
けれど、七月に入って一週間が経とうかという東京に梅雨明けの一報は届かず、
健気な視線は分厚い雲に通せんぼされるばかり。
アーニャの口からも思わず物憂げな溜息が一つ、
ふぃよと机の上へと零れ落ちてしまいます。
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2:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:13:01.08 ID:HnCLjJSc0
これまた曇り気味の窓ガラスを背景にまろび出たその仕草は、
さながらキャンバスに描かれたモノクロの絵画のようで。
ただその二つの深い青の瞳と、くるくる回される真っ赤なシャープペンシルばかりが、
何よりもその作品の完成度を高めていました。
3:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:15:25.43 ID:HnCLjJSc0
「――それでは、ひらひら降る、これはどうか。まだ足りない。
さらさら、これは近い。だんだん、雪の感じに近くなって来た」
4:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:19:26.86 ID:HnCLjJSc0
……シトシト?
5:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:23:59.68 ID:HnCLjJSc0
◇ ◇ ◆
「円卓会議を執り行う! 騎士共よ、剣を置き卓へ就け!」
6:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:29:46.79 ID:HnCLjJSc0
「円卓会議を執り行う! 騎士共よ、剣を置き卓へ就け!」
(緊急会議です。席に着いてくださいっ)
7:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:35:29.91 ID:HnCLjJSc0
そう。本日は七月の七日、七夕のその当日でした。
事務所のロビーにも立派な笹が飾られていて、
8:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:43:18.27 ID:HnCLjJSc0
◇ ◇ ◆
少しだけ小降りになってきたような気もする雨が、アーニャの差す赤い雨傘を叩きます。
9:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:50:52.60 ID:HnCLjJSc0
あつあつのコーヒー。きらきらと光る星――
10:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:54:12.71 ID:HnCLjJSc0
学校にいる間はざぁざぁと表現するべきだった雨も、
事務所へ辿り着く頃にはぽつぽつと呼ぶのが相応しいくらいの勢いにまで治まっていました。
玄関ロビーの自動ドアを潜った途端、目に飛び込んでくる立派な笹の前で、
11:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 21:59:23.41 ID:HnCLjJSc0
短冊と一緒に吊るされていたのは、個性豊かなてるてる坊主たち。
茄子に芳乃、それから楽しそうな雰囲気に釣られてやって来た年少組のアイドル達が、
賑やかにお喋りを交わしながら新たな坊主を結び付けていきます。
12:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 22:03:34.66 ID:HnCLjJSc0
◇ ◇ ◆
「ズェベルシーニェ! 奈緒坊主、できました♪」
13:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 22:06:53.03 ID:HnCLjJSc0
◇ ◇ ◆
「あの、アーニャさん」
14:名無しNIPPER[saga]
2020/08/02(日) 22:10:27.51 ID:HnCLjJSc0
「えと、ううん。昨日の現文、ちょっと笑ってたけど、どしたのかな、って」
「フフッ……知りたい、ですか?」
15:名無しNIPPER[nagasaki]
2020/08/02(日) 22:11:33.34 ID:HnCLjJSc0
おしまい。
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