42: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:39:31.36 ID:fbURo3hcO
 「噂の『魔王』って、あなたなの」 
  
 少し驚いた表情を見せた後、彼はニィと笑った。 
  
 「話が早いな。そうだ、俺が『魔王』だ」 
43: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:40:24.09 ID:fbURo3hcO
 驚きのあまり固まっている私に、自称魔王は笑いかけた。 
  
 「お前が思うほど、オルランドゥの情報管理は堅くないんだよ。 
 お前が一週間後の学会に合わせて発表する新魔法『追憶』。そのことぐらい、俺は知っている。そして、お前を狙った連中もどういうわけか知っていた」 
  
44: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:41:10.20 ID:fbURo3hcO
 急に魔王がこっちにやってきて、首根っこを掴んだ。 
  
  
 「それが事実だと、誰が決めた??人が言えば、それが事実になるのか??ああっ???」 
  
45: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:42:04.10 ID:fbURo3hcO
 「か……は……」 
  
 息が、苦しい。小さい身体なのに、なんて力だろう……意識が、遠退き始める。 
  
 魔王は我に返ったのか、急に力を緩めた。 
46: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:42:32.34 ID:fbURo3hcO
  
  
  
 ああ、彼も私と同じなのか。 
  
47: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:43:47.56 ID:fbURo3hcO
 この少年……というよりこの男性のことを、私は全く知らない。一般的な、邪悪な魔族なのかもしれない。 
 ただ、嘘をついているわけでは全くなさそうだった。特に、自分が知らない真実を知りたいと願う心には曇りがない。 
 それぐらいは、目を見れば分かる。それに、邪気を孕んだマナは彼からは感じ取れなかった。 
  
  
48: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:44:22.44 ID:fbURo3hcO
 「……分かった。でも、一つ聞かせて。サンタヴィラに行って、もし真実が分かったら……その時、私はどうなるの? 
 ……そしてあなたはどうするつもりなの」 
  
 「前者については、ちゃんと報酬付きで解放してやる。金は唸るほどあるから、全てが終わったらそれなりに不自由のない日々が送れるはずだ。 
 後者については……分からない。どうするのか、自分でも分からない」 
49: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:44:59.80 ID:fbURo3hcO
 # 
  
 「じゃあ、行くぞ」 
  
 魔王はフードをすっぽりと被った。私はというと、魔法使い御用達の黒いローブ姿だ。「いつも慣れている服装の方がいいだろう」ということらしい。 
50: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:45:41.83 ID:fbURo3hcO
 オルランドゥの街を出ようとした、その時だ。 
  
  
 ……ゾクン 
  
51: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:46:28.17 ID:fbURo3hcO
 「そこの魔法使い、止まれ」 
  
 ビクッと、私は金縛りのように固まった。 
  
 「な、何ですか一体」 
52: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/10(月) 09:47:11.20 ID:fbURo3hcO
  
  
  
  
 「『遺物』が一つ『スレイヤー』。この剣の錆にしてやるよ」 
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