【ワートリ】香取葉子の決意
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4: ◆cHgGoW87TMyQ[sage saga]
2020/08/12(水) 22:29:43.03 ID:oQgLvJpl0


「……アンタ、この前の大規模侵攻で死に掛けたって本当?」


 挨拶もそこそこに、問い掛けた。
 デリカシーのない、不躾そのものな問い。
 既に驚きを張り付かせていたアイツは、更に目を見開き、冷や汗を垂らし始めた。

「……本当、ですけど」

 突然の出現からの突然の問いに大分混乱しているようだったが、無視。
 私はお構いなしに続けていく。


「……何で死に掛けるのよ。キューブにされたならまだしも、ペイルアウト機能が付いてて怪我なんてする訳ないじゃない」
「それは……」


 アイツは、言葉を詰まらせた。
 私が何の意図をもってこんな質問をしているのか、考えているようだった。
 一秒、二秒……沈黙が過ぎていく。


「……相手に、トリオンだけに作用する能力を持ったトリガー使いがいたんです。だから、」
「だから、トリガー解除したって言うの? 相手はブラックトリガーだったんでしょう? トリガー解除すれば、私達は生身よ。
 本当の命懸けになる。それを分かってて、そんな馬鹿みたいな選択したっていうの?」


 遮るように、言葉を投げる。
 目の前の男が、まるで理解できなかった。
 自分達はペイルアウトという最終的なセーフティがあるから、ネイバーと戦えるのだ。
 本当の意味で命を懸けるなど、一介の学生にできる筈がない。
 だが、この男はその一線を踏み越える選択をした。
 分からない。
 何でこの男はそんな選択ができるのか。


「あの時は、それしか選択肢が……」
「嘘。逃げるって選択肢はあった筈よ。それこそペイルアウトでもすれば良い話でしょ」
「確かに逃げようと思えば逃げれたかもしれません。でも―――」


 一瞬。
 その一瞬だけ、それまで冷や汗をかき、たじたじとなっていたアイツが強い眼差しを見せた。


「―――守らなくちゃいけない奴がいたんです」


 そして、短く告げた。
 やはりそれは、私には到底理解のできない回答で。
 どうしようもなく、心をかき乱す回答だった。




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