【ワートリ】香取葉子の決意
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5: ◆cHgGoW87TMyQ[sage saga]
2020/08/12(水) 22:30:11.01 ID:oQgLvJpl0


「……訳わかんないわ……。その誰かを守る為に、アンタは命を懸けたっていうの?」
「……結果的には、まあ」
「それで傷を負って、死に掛けて……本当に死んじゃうとは思わなかったの?」
「その時はもうそれしか選択肢がないと思ってましたから……」


 冷や汗を垂らしながら、アイツは淡々と答えていく。
 普通の人では取れない選択肢を、さも当然のように。
 ここに来て、ようやく私は目の前の男を理解できた。
 こいつは、普通の人達とは根底の考え方が違う。
 目的の達成の為ならば、自分の命すら懸けるのだ。
 ランク戦に勝利するために、新たなトリガーを取り入れるのも、新たなメンバーを参入させるのも当然だ。
 勝利に続くのならば、コイツはどんな選択でもするのだろう。


「……アンタ、どっかおかしいわ」
「うっ……!」


 思わず飛び出た本音に、三雲は存外ショックを受けた様子だった。
 その反応がどこか可笑しかった。
 いざとなれば命を懸けられる男が、暴言の一つに心を揺さぶられている。
 こうしてみると弱々しい、どこにでもいる学生だ。
 ふと周りを見ると、既に日が傾きかけている。
 思いの外、話し込んでしまったらしい。


「時間取らせたわね。もう行くわ」
「はぁ……」


 気の抜けたアイツの返事を聞き流しながら、背中を向け、



「―――次は、負けないから」



 ―――小さく、決意を呟いた。
 認めたからこそ、私は強く想った。
 どうしようもなく弱く、訳の分からないくらいに強いコイツに、負けたくない―――勝ちたい。
 それは、これまで何となくで戦って来た私に出来た、初めての目標だったのかもしれない。
 え? と間抜けな言葉を零す三雲。
 もう振り返りはしなかった。
 個人の力量としてではない、指揮官の器量としてではない、また別種の強さを持った男。
 私は、未だその土俵にすら辿り着けてはいない。
 でも、それでも必ず、コイツに―――三雲修に勝って見せると、決意した。

 




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