【艦これ】大井と一夜を過ごすだけの話
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6: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/15(土) 10:56:37.64 ID:NLZLtzJb0

「ありがとう」

「ん?」

 大井の言葉は海風にかき消されそうになりながらもなんとか俺の耳へと届いた。届いたうえで、聞き返す。

「礼を言われるようなことをした覚えがねぇ」

 すっとぼけではなく本心である。普段の労いの言葉だとしても、にしてはタイミングが不自然だし、そもそも大井は直截的な表現を好まないタイプだ。
 それは決して彼女が冷血漢であるということを意味しない。たとえるならば、彼女は面と向かってタオルを渡すのではなく、そっとスポーツドリンクを差し入れるたちなのだ。それが美学や矜持によるものなのか、照れによるものなのかまではわからない。

「この企画」

「あぁ……」

 合点がいった。とはいえ、素直に首肯するのも躊躇われる。俺は面と向かって感謝されるのがこっ恥ずかしくて仕方がないのである。それが大井からともなれば輪をかけて。




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