羽川翼「それが……我が主人のお望みとあらば」阿良々木暦「決まりだな」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 22:56:04.54 ID:lUuaoiGOO
「それは結果であって理由ではない。理由を述べよ。吸血鬼になりたいと望んだそのわけを」
「はっ。私のような弱者を救済するためです」
「かかっ。吸血鬼が弱き者に救いの手を述べようとは……頭がおかしいとしか思えんな」

弱者の救済。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 22:57:30.52 ID:lUuaoiGOO
「儂の従僕を王に? 正気か?」
「はい。誰よりも相応しい逸材かと」
「ハッ「ハハッ「ハハハッ「ハハハハッ「ハハハハハハッ」ハァーッハハハハハッ!!!!」

主人の主人は上機嫌に高笑いを響かせて、迸る絶対的な強者の波動に当てられた私は、崩れ落ちるように跪いた。すごく、すごく怖かった。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 22:59:07.74 ID:lUuaoiGOO
「しかし、此奴が悪党に成れるとは思わん」
「はい。それについては私も同感です」
「ではどうする? 洗脳でも施すか?」

ハートアンダーブレードさんほどの吸血鬼ならばそれも可能なのだろうけど、主人の主人の力はなるべく借りずに、従僕の私は主人を王にしたかった。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:00:33.33 ID:lUuaoiGOO
「うぬが虐待されて育たなければ、そんな拗らせた極論には至らぬと思うが、違うかの?」
「恐らく幸せな家庭に育っていたとしても、いずれ現実を知り、行動に移していたでしょう」
「自らが聡いことを自慢しておるのか?」
「いいえ。私は愚かなので、自分が知っている解決策しか思いつかなかっただけです」

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:01:55.87 ID:lUuaoiGOO
「儂と同じく、従僕にも食事が必要だ。無論、断食しても死なんがいずれは正気を失う。さあ、どうするつかもりかの? 従僕の従僕よ」

楽しげに問いかける吸血鬼。悪意が伝わる。

「私が食料を見繕います」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:03:32.45 ID:lUuaoiGOO
「なあ、羽川」

わざわざ下僕に目線を合わせるように跪き、優しい優しい私のご主人さまは甘い言葉を紡ぐ。

「僕は別に王になんかなれなくたって、お前と一緒に穏やかに死んでいければそれで良かったんだ。そのために、お前を眷属にしたんだよ」
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:06:14.97 ID:lUuaoiGOO
「かかっ。とんだ茶番じゃな」
「せっかく完全体になれたハートアンダーブレードさんには申し訳ないですけど……よろしいですか?」
「是非もないわ。所詮は余生。良きに計らえ」
「ははっ」

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:09:21.83 ID:lUuaoiGOO
「忍野……忍野、メメ」
「おやおや、これはこれは。僕みたいな下賤な一般庶民の名前を覚えてくれているとは光栄だね。てっきり君は僕のことなんてすっかり忘れて、襲いかかってくるんじゃないかとヒヤヒヤしていたよ。今日は随分、機嫌が良いんだね」
「お前を襲ったりするかよ。お前は羽川をどう扱うべきか困った僕にアドバイスをくれただろう? その助言のおかげで今の僕たちは在る」
「助言なんてしてないよ。言葉のひとつで助かる事象はこの世に存在しない。君たちが助かったと感じるのは自由だけど、そう甘くはない」

以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:19:25.52 ID:lUuaoiGOO
「おい、忍野。そんな言い方はないだろう」
「いや、あるね。僕はこの元・委員長ちゃんのような『害悪』は、もともと大嫌いなんだよ」
「害悪って……羽川をそんな風に言うなよ!」
「はっはー! 怒るのは筋違いだぜ? 君だって持て余していたじゃないか、この害悪をさ。この子はきっと吸血鬼になって悪に染まらずとも人間のまま持ち前の正しさを振りかざし、最低限の必要悪すら認めず調和を崩して、結果的に世界に仇なす敵になっていたと、僕はそう確信しているよ」
「黙れよ、忍野っ!」
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:26:25.25 ID:lUuaoiGOO
「ぐっ……くそっ……忍野のやつ……!」
「ああ、従僕……我が従僕よ。大丈夫じゃ。心臓を抜かれたくらいで吸血鬼は死なん。儂とて、そうじゃ。ああ、ようやく気づいた。どうやら儂も、あの小僧に心臓を抜かれとったらしい」

喘ぐ阿良々木くんを膝に乗せ、ハートアンダーブレードさんは悔しそうに備忘を歪ませて自らの不覚を告げた。彼女もまた、心臓を抜かれていたのだ。

以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2020/09/08(火) 23:30:43.11 ID:lUuaoiGOO
「復讐や仇討ちなどくだらん。そんなことよりも、うぬは自分の主人のために今するべきことがあるじゃろう。害悪ではないと証明せんか」

害悪ではない証明。自分の必要性を明示する。

「よいか、従僕の従僕よ。うぬは儂らの中で唯一血を送り出す心臓を持っておる。仮にも吸血鬼ならその意味くらい理解出来るじゃろう?」
以下略 AAS



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