13: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 22:56:01.74 ID:kh3F9e+N0
  
  ちひろさんが帰ってきたのは、もう夕方になろうとする頃だった。 
  私の顔を見て一言「ごめんなさい」と呟き、力なく社長室へと向かう。 
  彼女がなにを話すのかなんて、私には分からないこと。 
  だがちひろさんのまぶたはややはれぼったくて、相当に泣きはらしたのだろうということは容易に想像できた。 
14: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 22:57:02.65 ID:kh3F9e+N0
  
 「お姉さんに、ですか?」 
 「はい……弟がいろいろお世話になりました、と、お礼を言われて……」 
  
  そう言うとちひろさんは、ぽろぽろと涙をこぼす。 
15: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 22:58:18.62 ID:kh3F9e+N0
  
 「ちひろさん? マンションまで送りましょうか?」 
  
  私の提案に、ちひろさんはかぶりを振る。さすがに今の彼女をそのまま電車へ預けてしまうのは、不安でしかない。 
  通りに出てタクシーを捕まえる。 
16: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 22:59:30.24 ID:kh3F9e+N0
  
  車内。私は流れる街灯りをぼんやりと眺めている。 
  今日は本当に、いろいろとありすぎた。目まぐるしく変化する状況に、理解が追い付かない。 
  今こうしている間も、これが現実と思えない私がいる。 
  
17: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 23:00:14.02 ID:kh3F9e+N0
  
  あれは、現実だったのだろうか。 
  部長さんの落胆する表情。社長さんの苦悩の色。そして、ちひろさんの涙。 
  耳には、スタッフの指示の声。そして。 
 『自死』の言葉。 
18: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 23:00:44.32 ID:kh3F9e+N0
  
  私は、彼ではないのだから。 
  
  
19: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 23:01:24.85 ID:kh3F9e+N0
  
  その事実が、心に突き刺さる。 
  だが彼は、デビュー前からずっと、私を担当してくれたプロデューサー。そして、この芸能界で最も深く長いお付き合いをしている、大切な人。 
  私たちは二人三脚で、シンデレラロードを歩いたのだと思っている。 
  そのことに気付いて、私は理解した。 
20: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/13(日) 23:02:53.62 ID:kh3F9e+N0
  
 ※ 今日はここまで ※ 
  
 副業の合間を縫って更新します。 
 毎日は無理そうなので、しばらくずっとお待ちください(←? 
21:名無しNIPPER[sage]
2020/09/14(月) 00:43:23.38 ID:AZmn02Jho
 おつ 
 きたい 
22:名無しNIPPER[sage]
2020/09/14(月) 11:54:14.94 ID:SzajDXTSo
 乙 
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