6: ◆gxyGj7UNSanm
2020/10/26(月) 11:47:29.63 ID:DoobzDCc0
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765プロ有する劇場―――オープン前のそここそが、俺の、今現在の、メインの仕事場である。
それにしても眠たい。食事をとった後だからか、それとも夜起きてしまったからか。
どっちが、というよりどっちもその理由になるだろう。
たまに、夢見が悪いことがある。
たいしたことではないのだが、まあそういうことを他人に言うのもあれなので、こうやって一人げんなりする。
延々と若い女性に耳元でささやかれる夢をたまに見るなんて言ったら、どう思われるものかわかったもんじゃない。
ただでさえ、職場はほとんど女性しかいないのだ。
「なあ春香」
「どうしたんですか、プロデューサーさん」
「お前夜な夜な俺の枕元でわけわかんないこと囁いてないよな?」
どんがらがっしゃーん、とこうなるわけだ。
とてもじゃないが、春香や真ぐらいにしか言えやしないのである。こんなこと
「ば、ばば、ばれてましたか!?」
「そうさな、そういう役はお前には似合わねえわな。
どっちかというと、貴音とか……あと律子とかか。
あの三つ編みほどいてやったら案外受けるかもわからん。眼鏡はヒビ入れてやるか。
いやそれじゃ幽霊になっちまうなあ……」
よかったぁ、ばれてなかったぁとかいう声が聞こえたがよくここまで乗ってくれるものだ。
確かに付き合いは長いが、たまに春香という女との距離感が迷子になる。
「幽霊……ですか?何かオファーがあったんですか?」
「ないって。まあ俺の夢見が悪いって話。
なんなんだろうな、この間なんか劇場が宇宙に飛んでいく夢を見たし」
それ夢じゃないです、なんて真顔で言うのも冗談だろう。
ただ、ノリ突っ込みにしても、突っ込みが迷子だ。それはいただけない。いや、逆にシュール漫才としてはありか?
それにしても、芸人気質の抜けないアイドル様である。
駆け出しの時に、そんな仕事を振った俺にも問題があるとはいえ、やっぱり本人の素質はあると思う。
何もないのに転ぶなんて真似しようとしても誰もできないわそんなん。
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