【ミリオンライブ】ちょっとファンタジー劇場
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7: ◆gxyGj7UNSanm
2020/10/26(月) 11:48:25.93 ID:DoobzDCc0
「まあいいや。
 暇ならこの履歴書見てくれ」
「え?39オーディション応募書類ですか?」
「あー正確には応募じゃなくって、内定済。
 俺が直接スカウトした子だな」
「へぇ」

春香の目がすわった気がしたが、それぐらい真剣に新しいアイドルのオーディションを気にしているということだろう。
春香にも先輩としての自覚がでてきたようで結構結構。

「かわいい子ですね」
「そりゃかわいい子かかわいくなる子しかスカウトしないしな」
「へー」

ますます目が鋭くなっている気がする。
タバコを持たせたらその筋の人の愛人でもいけそうである。
悪役もいけるな、と思いつつ、書類に目を戻す。

「でもかわいいだけじゃアイドルとしてはやっていけません」

言うようになったな自称普通のアイドル。
だが、その通りである。
普通のアイドル事務所でもかわいいだけじゃやっていけない。
増してや今募集しているのは765プロの新設した劇場で活動してもらうアイドルだ。
個性豊かな―――というか、個性しかない元々のメンバーに加えて、39人のおかわりを加えて売り出すことになる。
そりゃあ、なまじっかな個性ではやっていけない。

その上、道端で不審者扱いされることも恐れず唐突にスカウトする対象となれば。
すさまじい個性を振りまいていること必須というわけである。
765きっての敏腕Pである俺が!時に職質を受けながら!スカウトしてきたアイドルなのである!
それこそ、呉服屋で店番をしているくせに微妙に愛想がないが和服が似合いそうな美少女とか。
あるいは、大学のミスコンで優勝するような一目でわかるセレブでもなければ正直そんな危ない橋はわたりたくない。
むべなるかな。

「で、765プロに一人しかいない、アイドルに尻ぬぐいばっかりさせる凡Pさんが犯罪スレスレの方法でスカウトするぐらいに魅力的なこの子の魅力って?」
「人聞きが悪いな大佐。ともあれこいつはすごいぞ」
「何がすごいんですトーシロー」

食いついてきたな、こやつめ。にしてもノリいいな。

「この子が朗読する物語はすごいぞ」
「……はい?」
「ちょっと待て。わかりにくいな?
 つまりこの子は本が好きらしいんだが、彼女が音読するとだな、まるでその情景が目に浮かぶようなんだ」
「……なるほど?」

 あっこいつ完全に疑ってやがる。俺を誰だと思ってる。天下の765プロのプロデューサーだぞ?
 お前らをアイドルとして一人前にした俺を疑うというのか。

「春香?」
「あっ私そろそろレッスンの時間なんで」
「嘘つけもう少しあるだろ。
 つまり、その、なんだ。この子が歌を歌ったらきっとすごいだろうなあとだな」
「まあ顔はかわいいですしね。好みなんですか?」

 なんでそうなる?
 俺の好み?好みってなんだ……?やっぱりナイスバディか?
 いや違う、こいつ、まさか……

「てめえ俺が私情でアイドルをスカウトしたと思ってんのか……!?」
「知りませーん。私は一介のアイドルなのでー」
「俺に私情でスカウトさせてみろ!バストとヒップが90超えてるナイスバディしかスカウトしなくなるぞ!」
「セクハラですよ、セクハラ!?」
「その通りです、あなた様」

「「ヒェッ!?」」

 そこにいたのは四条貴音。
 神出鬼没、変幻自在、詳細不明のアイドルである。
 そして突然声をかけられて、足を使わずに椅子から飛び降りて転げるとかどうなってんだ春香。

「乙女の個性を胸囲や腰囲などで決めつけてしまうのは感心しません。
 それがたとえあなた様のプライベートな好みであっても」
「えぇ……物のたとえで言っただけで、俺がナイスバディが好きなのがセクハラになんのか……?」
「そうですよ!少しは乙女の純情に配慮してください!」
「その通りです」

と言いつつ、貴音がめっちゃ上機嫌に見えるのは気のせいだろうか。
あともう一つ。



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