56:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:42:37.47 ID:6NLLeJ5C0
やたら真に迫った声がおかしかった。見れば、頬など染めている。まさか、文香にとってこれが重大かつ恥ずべき悪徳だったのだろうか。千夜は笑いを堪えた。
「それくらいのことなら、」
私が教えますよ、と言おうとして、先の中庭で、文香の読書が妨害された際のいきさつを思い出した。彼女はちとせが耳元に接近するまで、全く気付かなかったのではないか。
「少々、没頭してしまう方で……」
「成る程」
千夜が囁いても無駄なのだろう、と頷いた。といってちとせを真似て下手に触れでもすれば、また叫んで本を放り出しかねないのではないか、それも電車の中で。そうも目立ってしまえば、キャスケット帽さえ一体何の役に立つものだろう。
快適な読書から安全な降車まで、あなたに寄り添う安心の白雪保証です――などと出来ない宣伝をするのは賢明ではあるまい。
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