68:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:52:58.54 ID:6NLLeJ5C0
「それはアラビア語からの邦訳本、なのですよね。その『アリババ』も、アラビア語からの訳なのですか? そうすると……」
「アラビア語原典は、存在しない、という話でしたね。平凡社版の『アリババ』で底本とされているのは、ヴァルシー偽写本≠ニ呼ばれているもので、これには、アラビア語で『アリババ』の物語が記されています。これは一九八四年まで『アリババ』の原典と考えられていたのですが、実際はガラン版以降に成立したもので、ガラン版の仏語の物語をアラビア語に訳したものだと分かっています。つまり、平凡社『東洋文庫』版の『アリババ』は、ガラン版をアラビア語に訳したものを、改めて邦訳したもの、という事になりますね」
「結局、回りくどいのですか」
「ただし、このヴァルシー偽写本には、元のガラン版からすると、イスラムの雰囲気が色濃くなる、展開の突飛な部分に独自の解説を――といっても、殆ど《アッラーの思し召し》の一言ではありますが――挟むなど、大幅な加筆があります。ガランの物語のみならず、独自の口承資料を参照して、書かれた写本の可能性もあるようで、これを底本にした『東洋文庫』版も、必ず参考になりますよ。
……もう一つ、読みやすいのは、西尾哲夫の手になる、ガランの仏語版を訳した、岩波書店のものですね。題を『ガラン版 千一夜物語』」
「ガラン版というと、『アリババ』の初出なのですよね」
「はい。……やはり、これが一番、参考になるかと」
「岩波書店ですか、探してみます」
「これです」
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