7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 22:59:00.96 ID:6NLLeJ5C0
文香はそこまで言うと、物語の終わりを確かめるように、深く呼吸した。
「と、いうのが…… 粗筋です……」
カラカラカラ、とエアコンの駆動音が耳に入った。力を抜くと、背中が黒革のソファに沈んでいった。……
千夜はローテーブル向かいに感謝を述べてから、
「昔話というにも奇妙ですね」と発した。「あまり教訓的でない、というか。アリババなど、賊のモノに手を出して、≪真面目に働いている≫とされた前評を裏切っておきながら、それで生まれたトラブルは僕頼り、最後にはそのまま幸福になってしまうとは」
文香は聞いて、ふふ、と笑った。
「はい…… 仰る通り、アリババの境遇には、あまり因果応報といった所感の、得られるようではなく、なかなか都合の良いお話に、思われますね。《全ては神の思し召し》、というところなのでしょう。もし教訓でいうなら、盗賊側が焦点なのかも、しれません。悪事に手を出すことによった成果は、アリババに横取りされ…… そのことへの報復によって、自らを滅ぼしてしまう。せめて報復を取り止め、宝庫の哨戒にでもあたっていれば、少なくともアリババは、それ以上の深入りはしなかったでしょうから…… 《あわてる者は欠損を招く》というあたりが、まあ、総括になるのでしょうか」
「そうなのですね」
釈然とはしないまま返す。それが盗賊の運命から学びを得る為の舞台装置に過ぎないというのなら尚更、千夜から見れば何の努力をするだとか、称賛に値する美徳や才覚をすら備えないアリおじさん≠フシンデレラストーリー≠ヘ、殆ど許し難くさえあった。
もしシンデレラ≠ニ呼ぶのなら、
「実際、モルジアナの方が余程、主人公然としているようですね」
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