15:名無しNIPPER[saga]
2021/01/14(木) 23:09:15.08 ID:08Ool1XX0
科学研究室前
指揮官「私は、果たして間違っているのだろうか」
アシモフ「俺に言うな、あんたの決断だろう」
不機嫌そうに、手を振った若き科学者アシモフ。彼が朝早くから、研究室で不可思議な数式とにらみ合っていたところを、話しかけてみた。
なぜなら彼が、私の頭の中にいる住人について、もっとも詳しいと言えるだろうから。
指揮官「客観的な目線が欲しくなったんだよ。私が知っている中で、君はもっとも理知的で、パニシングウイルスに明るいからね」
アシモフ「褒めてるのか、それは」
指揮官「勿論だ」
アシモフはため息をついた。
アシモフ「俺は、可能性の話をしただけだ。お前の全身のパニシングウイルスが信号を発して、昇格者と不思議な線を繋いでいる。
目には見えないが、ある意味お前の隣に昇格者が立っていると言っていい。そして、ウイルスが発している信号の種類はまだ解析が済んでいない。だが、ある種の情報を含んでいることは十分に考えられる」
指揮官「それが、私の記憶という可能性だな」
アシモフ「心あたりのあったお前は、私に相談したが、どうすることもできない。
もし、本当にパニシングウイルスを止めたければ、お前ごと殺すしかない」
指揮官「よくわからないものに殺されるのはごめんだ」
アシモフ「なら指揮官をやめるというのは、妥当な線だろう。お前は、代わりに指揮官としての記憶を司令部に永遠に預けることになるが、死ぬことはない。だいたいエデンで暮らすのに、戦争の記憶は必要ない」
そのとおり、わたしが指揮官を辞めれば、指揮官でいた記憶を司令部に捧げなければならない。それは指揮官になる前からあらかじめ分かっていた
ことだ。
戦争にまつわるいかなる情報機密も守らなければならない。
戦争に構造体がどのように使われ、死んでいくかなど、エデンの誰も知る必要はない。
人権が守られては、地球を取り戻せない。
とはいえ、指揮官になった時の私は、記憶を失うつもりなどなかった。
戦場に出る指揮官の死亡率は40歳代までに100%である。
私は、辞職する前に自分が死ぬと、思っていた。
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