小林「あなたは……誰ですか?」トール「……えっ?」【小林さんちのメイドラゴンSS】
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84: ◆bhlju8wMK6[saga]
2021/07/28(水) 22:46:29.41 ID:nmTneDWj0

小林「……コ、コホンッ! とにかくっ! トールちゃんの話は分かったっ!」ゲフンゲフン

トール・滝谷((強引に話題を変えたな……))

小林「――騙そうとする様な悪意は感じなかったし、恐らく嘘をついてはいないんだと、私は思ったよ」

トール「じゃ、じゃあ、信じて頂けるんですね……!」ギュウッ

滝谷「うん。僕もこれが詐欺だとか、ましてや人違いとかの話ではないのは分かったよ。
   とても詳細で、真に迫った説得力のある内容だった。だからこれは本当にあった話――」

トール「お二人共……!」パアッ……

滝谷「――で、あるか、もしくは」

トール「え?」ピタッ



滝谷「……君が、僕達のプライベートを隅々まで調べ上げた上で、
   その情報を元に『一緒に暮らした記憶』を詳細に作り上げられる程に極度の妄想癖のある子であるか、だ」



トール「――――な――――」サアッ



小林「ちょっと滝谷君、言い方っ!」キッ

滝谷「うん、意地悪な言い方をしたのは謝罪するよ。
   けれど意地悪だろうが捻くれていようが、それもまた現時点では否定できない、可能性の一つだ」

小林「でも、じゃあさっきの道中で一緒に見た、あのドラゴンの姿はどうなのさ。私なんか触って質感も確かめたんだよ?」

滝谷「そうだな……。例えばトール君は高度な催眠術を習得していて、僕達はあの時リアルなドラゴンの幻を見せられていた、とか?」

小林「っそんなの、魔法やファンタジーと同じくらいっ――」

滝谷「ああ、同じくらい荒唐無稽で、フィクションの様な話だね」

小林「んぐっ……!」グウッ

トール「………………滝谷さんは」ポツリ

滝谷「ん?」

トール「滝谷さんは、やはり魔法やドラゴンなんて非現実的で、信じられないと思ってるって事ですか……?」

滝谷「いやいや! 誤解しないでほしいんだけど、既に僕も9割信用していいと思ってるさ。信用したいともね」サラッ

トール「え?」キョトン

滝谷「だけど現状、まだ最後の1割を信用するにはどうしても無視できない、大きな認識の齟齬があるからね……」フウ

トール「認識の、齟齬……?」

滝谷「ああ…… この一年間の、『僕達にとっての記憶』とのさ。それは小林さんも分かってるだろう?」

小林「むっ……。そりゃ、分かってるけど…… あんな言い方……」プンプン

滝谷「ごめんごめん。ああ、トール君もごめんね。上手い言い方が思い付かなかったものでさ……」タハハ……

トール(――ああ、そうか)

トール(言い辛くても誰かが一度、はっきりと言っておかなきゃいけない事を、自分が言って憎まれ役を買って出た、という事ですか……)

トール(全く、この男は普段おちゃらけているくせに、こういう所があるから……)ハア

滝谷「トール君?」

トール「別に、気にしてませんよーだ。けど、人間風情が調子に乗らないで下さいね」プイ

滝谷「あ、あはは……」ポリポリ




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