結標「私は結標淡希。記憶喪失です」
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801: ◆ZS3MUpa49nlt[saga]
2022/01/22(土) 18:31:36.50 ID:7SptLiMdo


 その名前を聞いた彼の頭の中に真っ先に浮かんだのは、統括理事会の一員である老人の顔ではなく、一人の女の顔だった。
 一方通行は口の端を歪める。
 

一方通行「チッ、そォいうことか。あのクソ女め、余計なことしやがって」

土御門「ちなみにそのクソ女さんから伝言を預かっているぜい」

一方通行「伝言だと?」


 土御門がごほん、と咳払いをする。
 

土御門「『卒業式前日のときの借りは返したけど。これでもう貸し借りなしってことだから、次何かやりやがったらもう知らんけど』だとさ」

一方通行「……馬鹿かコイツ。あンなくだらねェ進路相談のお返しで、統括理事会の一人を動かしてンじゃねェよ」


 一方通行は全身の力を抜いてベッドに倒れ込んだ。
 まるで気が抜けたように、不貞腐れたように寝転ぶ。
 

土御門「じゃ、オレはそろそろ行くとするよ。せいぜい、ゆっくり休むことだな」


 そう言いながら土御門は病室を出ていった。


一方通行「……チッ」


 ドアが閉まり、少年が出ていったあと、一方通行は忌々しそうに舌打ちをした。
 彼との話をしている中で、あることに気が付いてしまったからだ。
 結局、自分は彼女との、結標淡希との『約束』を果たせていないのではないか。
 
 土御門の話を全て鵜呑みにすれば、結標淡希は闇の世界から救い出されたことになる。
 それは一方通行にとっての目的でもあるため、願ったり叶ったりのことだ。
 しかし、それは一方通行の功績ではない。土御門を始めとした『グループ』や、統括理事会の一人を裏から動かすことができる女が与えてくれたモノ。
 一方通行は学園都市最強のチカラを持っている。だが、それだけだ。
 所詮は一介の学生である彼には、何も変えることはできなかった。
 
 胸にズキリと痛みを感じた。
 
 
一方通行「…………、いつまでも、泣き言は言ってられねェか」


 呟き、起き上がった一方通行はベッドから足を降ろし、棚に置いてあった機械的な杖を手に取る。
 それを使ってゆっくりとベッドから降り、立ち上がり、部屋の外へと向かって歩き出した。
 
 
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