17:名無しNIPPER
2021/09/03(金) 21:42:53.92 ID:7DsiAVC70
「どうしたんですか、サヤさん」
呼びかけると、サヤさんは泣きそうな顔で振り向いて言うのでした。
「ここ、お化け屋敷だそうです」
私は頬に手を当てて、困りましたねと笑ってみせます。
「これは困りましたね。サヤさん、ジェットコースターで怖い目にあったばかりですし、別の遊具にしましょうか」
「ぜひそうしたいです。ぜひそうしたいですけれども、この建物を目指してずっと坂を登って来たのに、今さら引き返すのもしたくないというか」
せっかく来たのに…とサヤさんは少し口ごもって名残惜しそうにします。
「よし、では…」
私はぐっと握り拳をつくって、サヤさんに言ってみせました。
「では、サヤさん。このお城を探検しましょう。数々のおばけから逃げかいくぐり、私たちは無事に帰還するのです」
えぇ!、と、サヤさんは目を丸くし少し戸惑ったようでしたが、お城に入りたいようで、決心したように頷きます。
これは長い旅になりそうですね。
「いってらっしゃい」
受付に居たおばあさんがふふふと微笑むなか、私はサヤさんとともにその大きなお化け屋敷のなかへと足を踏み入れるのでした。
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