16: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/09/27(月) 19:16:17.83 ID:FpkFq5Eu0
 「――――――――――」 
  
  
  沈黙が流れる。 
  
  言いたい事があった。 
  話しかけたい事があった。 
  
  しかし――今俺が口にしてはならない。 
  
  だって先輩がこうして胸の内を明かしたのは、アルクェイドに対してだ。 
  そこに居合わせただけの俺が、今の先輩に語りかける権利は無い。 
  それができるのは、許されるのは、しなければならないのは、ただ一人のみ。 
  
 「…………………………シエル」 
  
  どれだけの時間が経っただろうか。 
  長く長く感じて、でも実際はそうでもないだろう時の砂。 
  
  先輩の胸の内を、自分のただ一度の吸血《あやまち》によって引き起こされた、数多くの悲劇の一つを明かされて―― 
  
  
  
  
  
 「ありがとう」 
  
  
  
  
  
  先輩を真っすぐに見据えながら。 
  
  アルクェイドは謝罪ではなく、感謝を口にした。 
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