29:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:47:00.80 ID:u50g9+A20
  
  
 「練習でうまくいかないことがあった日などは……すぐに帰りたくなかったので。よくここで本を読んでいました……」 
  
 「あら、そうだったんだ」 
  
  
  そういえば、レッスン終わり、文香はたまに、ふらりと駅とは違う方向に向かうことがあったけど。その先は、この喫茶店だったようだ。 
  
  
 「私も誘ってくれればよかったのに」 
  
 「それは……すいません……」 
  
 「謝らなくてもいいから。一人で本を読む時間も大事だもんね」 
  
  
  人間、一人になる時間は必要だ。きっと私や文香のような人にとっては、なおさら。 
  
  
 「でも、教えてもらったからには、私もここに来ちゃうけど、いいの?」 
  
 「奏さんがですか?」 
  
 「ええ。とっても素敵な場所なんだもの」 
  
 「それは、よかったです。奏さんにも、気に入ってもらえて」 
  
  甘い笑みを文香は浮かべた。 
  
  
  なるほど、そう来たか。そう返されれば私はお手上げだ。 
  
  
 「私こそ、素敵な場所を教えてくれてありがとう。嬉しいわ」 
  
  
  
  改めて、私は言った。 
  
  
  
  
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