65:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:00:20.30 ID:u50g9+A20
  
  
  
  なにが、私になのか。 
  
66:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:01:33.11 ID:u50g9+A20
  
  
  
 「奏さんは優しいんです。とっても。優しくて、周りがとてもよく見えていて、だから自分を押し殺しているんです。でも、本当は押し殺さなくたっていいんです。奏さんは、もっと、もっと素敵な人だって、分かってもらっていいんです」 
  
67:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:03:05.73 ID:u50g9+A20
  
  
  
  私は、モニターに目を向ける。次のアイドルが、舞台で歌を歌っている最中だった。 
  
68:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:05:25.80 ID:u50g9+A20
  
  
  
  
  選択したことで、あの映画は悲劇に進んだ。 
69:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:07:49.72 ID:u50g9+A20
  
  
   
  医務室を出て、私は舞台裏に走った。急ぐ私を、スタッフや他のアイドルがぽかんとした顔で見送っていた。 
  
70:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:09:47.13 ID:u50g9+A20
  
  
  
 「……奏、それも君の冗談かな」 
  
71:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:12:03.79 ID:u50g9+A20
  
  
  
  かっと、胸が熱くなった。 
  
72:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:15:41.25 ID:u50g9+A20
  
  びっくりするぐらいの大声だった。 
  
  振り返ると、童顔な長髪の女性が、両手に腰を当てて、胸を張っていた。 
  
73:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:17:34.94 ID:u50g9+A20
  
  
  文香が出れなくなったことによって慌ただしかった舞台裏が、さらに慌ただしくなった。 
  
  フレちゃんたちは、応援をしてくれるといった。 
74:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:20:27.51 ID:u50g9+A20
  
  
  急いで着替えて、また振り付けのチェックに行こうとしたけど、タイムアウトだった。 
  
  舞台の裏に、私は足を向けた。今は曲ではなく、幕間のトークの時間。舞台の上では、アイドルたちが和気あいあいとした会話を続けていた。 
75:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:23:50.23 ID:u50g9+A20
  
  
  音が鳴り出すと同時に、スポットライトが私を照らし出した。 
  
  どんな演出なのか、当然私は知らない。 
76:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:25:57.93 ID:u50g9+A20
  
  
  曲調が早くなって、それに合わせて私の声音はさらに熱を帯びていく。 
  
  小さな間が入って、また曲のリズムが変わる。 
77:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:27:27.40 ID:u50g9+A20
  
  
  歓声とペンライトの波のはざまを、私は泳ぎ続ける。 
  
  
78:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:29:56.25 ID:u50g9+A20
  
  
  
  
  私は奏でた。自分自身への文を。 
79:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:34:17.56 ID:u50g9+A20
  
  
  
  
  舞台袖に戻ってくると、とたんに浮ついていた足元がはっきりと感じられた。 
80:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:36:34.52 ID:u50g9+A20
  
  
 「みんなで見てたんだけど、フミカちゃん、カナデちゃんに会いたいっていうからさ。でもまだ歩くの危なそうだし、そこでユッキーのひらめきです」 
  
 「あたしが椅子に乗せたまま連れてこうって。ほら、車いすみたいに!」 
81:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:39:00.91 ID:u50g9+A20
  
  
  
   
  緩やかに舞い上がった黄金色の落ち葉は、そのまま蒼い空に吸い込まれていった。 
82:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:42:29.75 ID:u50g9+A20
  
  
  ライブは、成功に終わったと考えてよかった。 
  
  嬉しいことに、私に対しても好意的な意見が並んでいた。 
83:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:44:05.84 ID:u50g9+A20
  
  
  私が好きだといった、二つの映画のパンフレット。 
  
  
84:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:46:56.79 ID:u50g9+A20
  
  
  それから予定通り三件目も回って、気づけば空は黄金色に変わりだしていた。 
  
  予定も、全てこなすことができた。 
85:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 23:49:34.09 ID:u50g9+A20
  
  
  文香が、人差し指で鼻に触れる。 
  
  私も、同じように人差し指で鼻に触れた。 
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