31:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 21:51:03.80 ID:u50g9+A20
  
  
 「どうして。褒めてるんだよ、あのころからしたら、文香、すごく成長してる。まるで赤毛の女の子を見守る気分。あっという間に大人になってって」 
  
  
  パッと、文香の表情が明るくなる。 
  
  
 「私のお貸しした本、読んでくれているのですか?」 
  
  
 「ええ、もう少し」 
  
  
 私はカバンから読みかけの本を取り出した。しおりが刺さっているのは、終わりの方。今日中には読み終わるだろう。 
  
  
 「どうでした、その本」 
  
 「予想外、というところかしら。こんなに読みやすくて、面白いなんて。この原作、出版はかなり前でしょ」 
  
 「今から百年以上前ですね……孤児で居場所がなかった少女が島にやってきて、その天真爛漫さをいかんなく発揮させて愛されて……最後には大人の女性になる。シリーズはたくさんありますが、第一作目で十分に彼女の魅力があふれ出しています」 
  
 「一作目が名作だからこそ、続くものだからね」 
  
  
  映画でも、思い当たるものはいくつもある。どれほど派生や続編がでても、一番輝いているのは一作目であることは多い。 
  
  
 「文香の成長が早すぎるせいで、心臓発作で倒れてしまいそう」 
  
 「心臓発作になったのは……別の理由ですが……」 
  
 「そうだったわね」 
  
 「……でも、もし心臓発作をするとしても、それは私をだます嘘にしてください。巻き上げられるほどの……お金は持っていませんが……」 
  
  
  その言葉に、今度は私がパッと表情が明るくなった。 
  
  
  
 「文香こそ、観たの。私がおすすめした映画」 
  
  
  
  
  
85Res/117.90 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20