43:名無しNIPPER
2021/11/27(土) 22:11:48.40 ID:u50g9+A20
  
  
  
  私はショックを受けた。 
  
  そんな風に思われていたなんて。私の様子に、プロデューサーは慌てたように付け加えた。 
  
  
 「言い方が良くなかった。ごめん。でもそうじゃなくて。君は斜に構えすぎてる。まっすぐ向き合おうとしてるとは思えない。自分がこれ以上力を発揮しなくてもいいって、どこかで考えてない?」 
  
  
  そんなわけがない。私は今すぐにでも書類を投げつけて反論してやりたかった。それなのに、私の心は嫌というほどあっさりとプロデューサーの言葉を受け入れていた。 
  
  
  
  
 「……どうかしらね」 
  
  
  それが私にできた、精いっぱいの抵抗だった。 
  
  
  
  
  
 「奏さん……」 
  
  
  心配そうな視線を文香が向けてきた。そんな視線にたまらくなって、私は心の中で数字を数えた。 
  
  ワン、ツー。 
  
  
  
  
 「……なるほどね」 
  
  
  私は観念したように息をついた。 
  
  
 「ともかく、プロデューサーは私がまだ、一人では舞台に立てる力がないっていうのね?」 
  
 「……そうだ」 
  
 「プロデューサーがそう判断したなら、仕方ないわね」 
  
 「奏さんは……それで……いいのですか?」 
  
  
  
  不安そうな文香の顔を、今度ははっきりと正面から見て、表情を作った。 
  
  
 「ええ、仕方がないわ。今回はね。それに、ソロはないけど、出番自体はあるんだから。そこでせいぜい輝かせてもらうから」 
  
  
 「それじゃあね」と、言って私はプロデューサーの部屋を出た。 
  
  クーラーが効きすぎて冷たい廊下で一人、私は息を整えた。大丈夫、大丈夫。 
  
  
  
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