確信を得てしまったダイワスカーレット
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8: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/11/28(日) 06:57:32.70 ID:vPGydQ4T0
「こんばんは、トレーナー」

「こんばんは、じゃないだろお前。寮の門限は過ぎてるだろ。いやそもそも、なんでお前俺の住所を知ってるんだ?」

「さあ、どうしてだと思う?」

「……スカーレット?」

 困惑をまるで隠せない俺を、スカーレットは涼やかな笑みで見つめる。それは優等生を装っている時のスカーレットのようで、数時間前に感じた違和感を思い出させるものだ。

 数時間前――練習開始前の時。

 用を終えてトレーナー室に戻ってみると、スカーレットとウオッカTが何やら話し込んでいた。
 スカーレットはウオッカTにも基本的に優等生の顔を見せているが、ウオッカを通して普段の自分を知られている事もあって、たまにフランクな態度になる。だからこの二人が話し込んでいる事自体は意外ではないのだが、ウオッカTの憔悴した様子が気になった。

『やっと戻ったのね。さあ、それじゃあ練習を始めましょう!』

 何かあったのか。そう問いかけるのを防ぐようにスカーレットが声を張る。ウオッカTも背を曲げながら力なく立ち去ろうとするため声をかけづらく、結局は有耶無耶になってしまった。

『すまない……本当にすまない』

 横を通り過ぎる際の、まるで妻子の命を握られてしまったかのような、ウオッカTの苦悶に満ち満ちた表情が鮮明に思い返される。 

「……ちょっと待ってろ。車で送るから」

 不吉な予感に身震いがする。しかしそんな事は後回しだ。まずはこの教え子を無事に寮に送り届けなければ。

「いいじゃない別に。部屋にあげてちょうだい」

「バ鹿言え。俺が力でお前をどうこうできるわけないけど、男の部屋に、それも夜にあがろうとするんじゃない」

 訳の分からない状況にこっちは振り回されているというのに、スカーレットはどこ吹く風といった様子だ。そんな態度と、自分が魅力的な美少女という自覚が急に抜けたかのような言動につい語気が強まる。

「……くせに」

「……なんだって?」

 涼し気なスカーレットの笑みに、毒が混ざる。けどそれは、彼女の魅力を損なうものではなく引き立たせるものだった。
 少女らしからぬ妖艶な笑みを浮かべながら、とても彼女が口にする内容とは思えなくて頭が理解を拒んだ言葉を、彼女はもう一度、ゆっくり優しく囁いた。

「自分に自信がある勝気な女に、強引にされるのが好きなくせに」

「――――――――――」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――すかーれっとは、こんなこと、いわない。

 おとなになって、すきなひとができて、そのひととのなかがふかまったら、こういうことを、いうかもしれない。

 でも、すかーれっとは、まだしょうじょです。こどもです。ぼくのじまんの、たんとうばです。ぼくをたんとうにえらんでくれて、とってもうれしかったなあ。

 すかーれっとは、こんなこと、いわない。

「自分で言ってたでしょ。昼間っから、学園内で」

 ああ、ぼくがいけなかったか。

 かのじょのみみに、じゅんすいなかのじょに、きたないはなしをきかせてしまった。

 かのじょがこんなことをするのは、ぜんぶぜんぶ、ぼくがわるいんだ。

「さ、部屋にあげて」

 うん。おとこのひとりぐらしで、きたなくてもうしわけないけど、どうぞおあがりください。


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