【ミリマスSS】待ちぼうけのバースデー【中谷育】
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4: ◆p1Hb2U6W8I[sage saga]
2021/12/16(木) 19:05:31.61 ID:75fHlW9w0
女の子がぽつりぽつりと語ってくれたところによると、この子も育と同じくアイドルらしい。
今日は新人として局に挨拶回りに来ていたが、同行していたプロデューサーとはぐれてしまったとのこと。
広くて複雑な局内で、初めて来た小さな女の子が人探しをするのは大変だよなぁ。
寡黙な雰囲気の子だし、道行く人を頼るのも難しかっただろう。
というわけで、俺が代わりに局の事務に問い合わせると、少し時間はかかったがこの子のプロデューサーと連絡を繋ぐことが出来た。
駆け付けた青年は安心が半分、申し訳なさが半分といった様子で、俺と少女に平謝りしていた。
それなりに大変な出来事だったが、別れ際に少女が見せた、ささやかながら可愛らしい笑顔で疲労感は満足感に変わってしまった。
・・・はっ、いかんいかん。
育を待たせたままだった。

「ごめん、育!待たせちゃったな!」

「・・・プロデューサーさん」

さっきのスタジオに戻ると、育はしょんぼりとしながらパイプ椅子に座って足をプラプラと揺らしていた。
気付くと、収録が終わってから一時間が経過していた。
もうそろそろ、劇場に戻って今日のライブの準備をしないと。

「本当にごめんな。一緒にどこか出かけようって言ってたのに・・・」

「ううん、気にしないで。こまってる人がいたんでしょ?」

「それはまあ、そうだけど。でも・・・」

「だったら、しかたないよ!それに・・・」

育はその綺麗な瞳で、真っすぐ俺を見つめる。

「プロデューサーさんだったら、ぜったいにわたしのところに帰ってきてくれるって、しんじてたもん♪」

その笑顔は、純粋で、眩しくて、それでいて思わず抱きしめてしまいたくなるほど、温かった。

「育・・・」

「あっ、でもね・・・」

そこから一転、育は俺から目を逸らして、遠慮がちにスーツの袖を指で摘まんできた。

「今はもうちょっとだけ、そばにいてくれたらうれしいな・・・♪」

頬をほんのり紅く染めて、上目遣いで繰り出されたその懇願は、脳髄にガツンとくる威力があった。

「う、うん。わかった」

「えへへ、今だけプロデューサーさんを独り占めだね♪」

妙に照れ臭くなりながら、右の手の平を包み込んだその小さな手の平を、そっと握り返した。



おわり


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