馬場このみ「シクラメンの花の香」【ミリマスSS】
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2: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2022/01/06(木) 22:54:52.00 ID:dy8vOWdb0
十二月にもなると、アルミサッシから漏れて見える五時過ぎの外の景色は真暗になっていた。
「ねえ、プロデューサー。今夜、時間あるかしら?」
事務作業が一区切りついたところを見計らって、私はプロデューサーに声をかけた。
「今夜? ……ああ。これといって予定はないけど、どうして?」
「コレに行かない?」
私は、古臭い表現ながら、杯を口元で傾ける仕草をした。
彼も合点がいったようで、笑って頷いた。
「いいよ、飲みに行こうか。このみさん、何か食べたいものとか、飲みたいものとかある?」
プロデューサーに訊かれて、少し考えてみる。すると、熱燗の柔らかい香りが頭をよぎった。そして、出汁の温かな香り。これは和の気分だ。
「そうね、日本酒って気分かしら。寒くなってきたし、和食と一緒に温かいのも飲みたいわね」
「俺もそう思ってたよ。それじゃあ、いつものところにしようか」
「ええ、いいわよ」
「よし、じゃあ支度するよ。ちょっと待ってて」
プロデューサーはパソコンで開いていたファイルを閉じ、机に散らかせた書類をテキパキと整理し始めた。私も、読んでいた雑誌を閉じて棚に戻し、上着を羽織っていつでも出られるように準備をする。
五分とかからず、彼も退社する準備を済ませた。
「お待たせ、このみさん」
「大丈夫、そんなに待ってないわ。じゃあ行きましょ?」
「ああ」
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