馬場このみ「シクラメンの花の香」【ミリマスSS】
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5: ◆kBqQfBrAQE[saga]
2022/01/06(木) 22:57:20.39 ID:dy8vOWdb0
「それじゃあ、かんぱーい」
ごちん、と鈍いジョッキグラスのぶつかる音がカウンター席で響く。
ジョッキを傾ける、というよりも呷る勢いでビールを一口、二口と喉に流す。夏は汗をかくから喉が渇くが、冬も乾燥しているから喉は渇く。炭酸が渇いた喉を刺激する。グラスを口から離し、ふうと息を吐くと、ビールの甘苦い香りが鼻を心地よく抜けた。
「はあ……、やっぱビールは冬でもいつでも美味しいわねえ」
全身の力が抜けるような心地に、頬もほころぶ。そんな私の姿を見て、隣に座るPが笑った。
「相変わらず、いい飲みっぷりだな」
「古臭い表現だけど、『この一杯のために生きてるー!』って言う人の気持ちが分かるわ」
「それは同感だ」
彼はまたケラケラと笑った。
酒飲み音頭ではないけれど、何かに理由を付けて、または何も理由もなしにこうしてPと飲みに行く。莉緒ちゃんなど事務所のお友達と一緒に飲むこともあるが、今日のように家の近くの行きつけのお店で飲むときは、彼と二人で飲むことが多い。
そのうえ、このお店はいわゆる小料理屋というところだ。手頃な値段なのに、日常とは少し違った美味しいご飯、美味しいお酒を楽しむことができる。おまけに顔を見知っているから、私はお酒を注文するときにいちいち年齢を訊かれないということも、ありがたい材料だ。
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