13: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:23:15.94 ID:NHAPh+ft0
   
 「まずい」 
 咄嗟にそう思いました。口にも出ていました。 
 すぐに左側の廊下も確認します。同じように壁で塞がっていました。 
  
14: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:23:58.58 ID:NHAPh+ft0
   
 とりあえず皆で大扉の前に集まって、持っていたスマホの様子を確認します。 
 が、一種のお約束のように、全てのスマホが「圏外」の表示になっていました。昴さんとロコちゃんはすごく狼狽えていましたが、私は「きっとこういう状況なら圏外になっているだろう」と思っていたので、冷静沈着です。瑞希さんも冷静でした。まさかのライバル登場……? 
 そんな風に、一か所に集まって現状確認をしている時のことでした。 
   
15: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:24:38.43 ID:NHAPh+ft0
   
 「ねぇ、何してるの……?」 
  
 不意に聞こえた声に、ロコちゃんが「ぴえっ!?」と鳴きます。 
 これには流石に私も瑞希さんも動揺を隠せないまま、声が聞こえた方向、つまりエントランス向かって左側の廊下があった場所に目線を向けると。 
16: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:25:21.06 ID:NHAPh+ft0
   
 「誰って、げき子だけど……。百合子さん、それで、何の用……?」 
 「その前に望月さん、どうやってここに入ってきたのですか?」 
 「え、普通に歩いて……。あれ、壁がある……?」 
 「そんなこともあるよ。ね、杏奈ちゃん」 
17: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:25:58.63 ID:NHAPh+ft0
   
 「私は、げき子。劇場を思う人々の夢のカケラが集まって生まれた、劇場の魂」 
 「ええぇぇぇヤバいよヤバいよ。オレ今の状況全然分かんないんだけど!」 
 「ロコもコンヒューズです〜! どういうことですかユリコ〜!」 
 「わ、わわわ私も全然分からないけど、でも、杏奈ちゃんが……!」 
18: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:26:43.92 ID:NHAPh+ft0
   
 「もちろん知ってるよ。瑞希ちゃん、百合子ちゃん、昴ちゃん、ロコちゃん」 
 「……瑞希さん、どうしたの? げき子は、げき子だよ……?」 
  
 杏奈ちゃんは暴走しちゃった私の妄想を聞いている時のように、様子を伺うようにこちらを覗き込んできます。私たちの言っている意味が分からないといった顔です。 
19: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:27:36.07 ID:NHAPh+ft0
   
 悲しそうな目でこちらを睨みつけながら、げき子という女の子に抱き着く杏奈ちゃん。 
 まさか、杏奈ちゃんにそんな目を向けられるなんて。何かのラノベで読んだことがある。これが「寝取られ」という感情……? 
  
 「大丈夫だよ、杏奈ちゃん」 
20: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:28:10.62 ID:NHAPh+ft0
   
 「落ち着いて。私はみんなと争う気は無いの。ただ、もう少し劇場を大切に扱って欲しいだけ」 
  
 劇場を、大切に……? 
 すぐ後ろの二人の表情から「ギクリ」というオノマトペが鳴る。 
21: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:28:44.00 ID:NHAPh+ft0
   
 「もうちょっと待ってもらえば……。そうだ、杏奈ちゃん。ごめん、ちょっと体を借りるね」 
 「んっ」 
 「うぇっ⁉」 
 「ゲ、ゲキコが、あぁぁぁアンナのボディーにインしました!」 
22: ◆ivbWs9E0to[saga]
2022/03/06(日) 20:29:43.59 ID:NHAPh+ft0
   
 いえ、駆け出そうとしました、確かに。 
 ですが、私の身体は金縛りにあったかのように動きません。まるでヘビににらまれたカエル、もしくは朋花さんに本気で怒られた時の私のようです。 
 私の他の三人も同じ様子。そんな私たちを眺めながら、杏奈ちゃんはゆっくりと目を開けて、ゆっくりとスマホを取り出して私たちに見せてきました。 
 ピコン。とLINEの通知音。 
27Res/19.08 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20