54:名無しNIPPER[sage saga]
2022/03/22(火) 00:40:14.07 ID:XVB8s0iW0
 待望した次子の誕生、しかし喜びも束の間、 
 その生まれた彼らを見てエーシルはすぐに嘆いた。 
  
 人間は知性種になるはずだったが、 
 生まれてきた彼らには自我が備わっていなかったからである。 
 肉体は頑強であったが、なんら意志を有していない抜け殻だった。 
  
 しかし見捨てはしなかった。 
 彼ならば一度抹消して新種族を創り直すことも可能だったものの、 
 この人間たちを生まれてくる前から深く愛していた故にできなかった。 
 彼はなんとしてもこの人間たちを育てることを望んだのである。 
  
 だがそこには大きな障害があった。 
 それはエーシル自身である。 
  
 光と闇のあらゆる性質を有するがゆえに、 
 彼の内面には人間を深く愛すると同時に、 
 不完全な人間を蔑む悪意も並存していたからである。 
  
 エーシルの蔑む心はこう唱えていた。 
 「自我を有する子」は『混沌の神々』のみで十分、 
 人間は子ではなく「自我なき奴隷」にするべきだと。 
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