13: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:19:32.12 ID:bb4C09gAo
  
 「……ライラは違うというのか?」 
  
 「あの子は周りの幸せを自分の幸せにできる子です」 
  
14: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:20:11.85 ID:bb4C09gAo
  
 私とて、喜捨はしている。 
 だがそれは、持てる者の義務としてだ。 
 そして、喜捨によって得られる有形無形の利の為だ 
 世に生きる人間など、大抵はその程度だろう。 
15: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:20:48.06 ID:bb4C09gAo
  
 「ええ、それは私にも分かっています」 
  
 だかそれは致命的なリスクでもある。 
 悲しいかな、世界はそれほど優しくできてはいない。 
16: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:21:33.19 ID:bb4C09gAo
  
 「最近のあなたが結婚の話しかしないと、あの子が寂しがっていたのです」 
  
 鈍器で殴られたような衝撃だった。 
 ライラがそんな事を? 
17: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:22:23.82 ID:bb4C09gAo
  
 私の望みを叶えて幸せになる。 
 それがライラの考えだったに違いない。 
 けれどそれは、本心からの願いだったのか。 
 そうではないから寂しさを感じたのではないのか。 
18: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:22:55.94 ID:bb4C09gAo
  
 「……ライラ自身に、か」 
  
 そんな当たり前の事を見落としていたのか。 
 いや、それだけではない。 
19: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:23:57.34 ID:bb4C09gAo
  
 「外に出て、いろいろな経験をして。それはあの子を成長させてくれます」 
  
 そして妻はそんな私を見放さずにいてくれた。 
 あまつさえ、私自身が省みる機会すら用意してくれた。 
20: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:24:27.33 ID:bb4C09gAo
  
 何やら風向きが変わってきた。 
 それもおそらく、私にとって都合が悪い方に。 
  
 「だってあなた、すぐに手も口も出すんですもの」 
21: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:25:06.09 ID:bb4C09gAo
  
 「あの子の事となると、途端にブレーキが壊れるんですから」 
  
 向けられた苦笑には思い当たる節がある。 
 いや、ありすぎるくらいか。 
22: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:25:34.15 ID:bb4C09gAo
  
 押しても引いても柔らかく受け止められてしまう。 
 もう何度となくこんなことを繰り返してきた。 
 だが実際、こういう時の妻の判断は正しい。 
 私はいつも助けられてきたのだから。 
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