9: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:16:26.02 ID:bb4C09gAo
  
 十分な経済力があり、家柄も申し分ない。 
 そして当然、本人の資質にも太鼓判が押せる。 
 海千山千の者どもと渡り合ってきた私の眼鏡に狂いはない。 
 この男ならばと、そう自信を持って言える相手なのだ。 
10: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:17:11.59 ID:bb4C09gAo
  
 「あなたは最近、ライラと二人で話をしましたか?」 
  
 動揺も後ろめたさもない、柔らかな声だった。 
 声音には私への理解さえも含まれている。 
11: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:17:46.95 ID:bb4C09gAo
  
 問いかけが針になって刺さる。 
 私が話をしている時、ライラはどうしていた? 
 ライラの目には何が映っていた? 
  
12: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:18:37.02 ID:bb4C09gAo
  
 確かに私たちの時と比べれば違いはある。 
 まず、ライラとその相手には面識がない。 
 だがそれは、私たちのケースが珍しいだけだろう。 
 今回の話が世間一般から逸脱しているわけではない。 
13: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:19:32.12 ID:bb4C09gAo
  
 「……ライラは違うというのか?」 
  
 「あの子は周りの幸せを自分の幸せにできる子です」 
  
14: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:20:11.85 ID:bb4C09gAo
  
 私とて、喜捨はしている。 
 だがそれは、持てる者の義務としてだ。 
 そして、喜捨によって得られる有形無形の利の為だ 
 世に生きる人間など、大抵はその程度だろう。 
15: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:20:48.06 ID:bb4C09gAo
  
 「ええ、それは私にも分かっています」 
  
 だかそれは致命的なリスクでもある。 
 悲しいかな、世界はそれほど優しくできてはいない。 
16: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:21:33.19 ID:bb4C09gAo
  
 「最近のあなたが結婚の話しかしないと、あの子が寂しがっていたのです」 
  
 鈍器で殴られたような衝撃だった。 
 ライラがそんな事を? 
17: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:22:23.82 ID:bb4C09gAo
  
 私の望みを叶えて幸せになる。 
 それがライラの考えだったに違いない。 
 けれどそれは、本心からの願いだったのか。 
 そうではないから寂しさを感じたのではないのか。 
18: ◆Hnf2jpSB.k[sage saga]
2022/05/21(土) 00:22:55.94 ID:bb4C09gAo
  
 「……ライラ自身に、か」 
  
 そんな当たり前の事を見落としていたのか。 
 いや、それだけではない。 
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