星輝子「真夏みたいに気持ち悪い」
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21: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2022/06/06(月) 00:53:38.75 ID:Sev9O2YP0
歩き続け、やがてデパートに到着した。

「何か買いたいものとかありますか?」

「えーと…特に、ないかな……」

「私も……」

「え、ないんですか!?……ボクもないですけど……」

行き当たりばったりな三人は、とりあえずフードコートに行くことにした。

ジュースとポテトをそれぞれ頼み、三人は席に着く。
結局どこに行ってもやる事は変わらない。
ただただ取り留めのない、世間話をするだけだ。
そしてこのどうでもいい時間が、何よりも心地良かった。

「そういえば星さんって何か好きなものとかありますか?」

「え?」

唐突な質問に思わず声が漏れた。

「好きな映画とか」

「映画っ……」

なぜか小梅が反応した。

「映画か……」

輝子が言いよどむと、幸子が口を挟んだ。


「よく聴く『音楽』とか」


一瞬呼吸する事も忘れてしまった。

「星さん?」

誤魔化すようにジュースのストローに口をつける。緊張のあまり味も分からなくなった液体を喉に流し込む。

頭の中は一つだった。
メタル。メタル。メタル。
言いたい。言いたい。共有したい。

こちらの顔を覗き込んでくる幸子と小梅。
この二人と一緒にメタルの話が出来たらどれだけ楽しいだろうか。
想像しただけで嬉しくなってくる。
輝子はゆっくりと口を開いた。
だが、喉からその三文字が出てくるまでに、心に巣食った言葉が。

『メタルはオタクしか聴かない気持ち悪い音楽です』

その言葉が、彼女の脳を占領した。
期待で上気した体が、一瞬にして冷えていくのが分かった。
喉から出かかった三文字を飲み込み、彼女は。

「最近CMで流れてるあの、アイドルの曲、良いな…って」

そう、咄嗟に言ってしまった。嘘をついてしまった。


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