220: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/11/08(火) 14:47:11.27 ID:YYNh6Lpr0
  
 ロトムは少し迷っていましたが──結局、観念したのか、図鑑へと侵入を試み始める。 
  
  
  「ロ、ロト…」 
  
 しずく「こんにちは、ロトムさん」 
  
  「こ、こんにちはロト…あの…」 
  
 しずく「なんですか?」 
  
  「こ、ここから出してもらえないでしょうかロト…」 
  
 しずく「出してもらえると思いますか?」 
  
  「ロト…」 
  
 しずく「ボールに戻って、今後絶対に自分からボールの外に出ないと誓えるなら、考えてあげるのですが……」 
  
  「も、もちろんロト!! 勝手に外に出ないと約束するロト!!!」 
  
 しずく「もちろん、信用出来ないので、当分はこの檻のまま運ぶことになるでしょうね」 
  
  「ロ、ロトォ!!? 酷いロト!! お前、人でなしロト!!!」 
  
 しずく「メッソン、まだ涙出そう?」 
  「メソ…」 
  
  「ヒィィィィィ!!!! 嘘ですごめんなさいロト!!! 許してロト!!!」 
  
 しずく「はぁ……。あと、私は“お前”ではありません。“しずく”という立派な名前があります」 
  
  「し、しずく…様」 
  
 しずく「様付けはしなくていいです」 
  
  「しずく……ちゃん」 
  
 しずく「まあ、それでいいでしょう……」 
  
  
 とりあえず、ホテルを探すのがまだ途中だ。いつまでもポケモンセンターに居たら日が暮れてしまう。 
  
 私は、先ほどの宣言通り、ロトムの入った檻ごと持ち上げて、ホテルのある地区へと移動を開始する。 
  
  
  「だ、出せ…じゃなくて、出して頂けないでしょうかロト…」 
  
  
 檻はかなり小さいサイズで重量もそこまでないため、多少荷物になる程度だからいいが……いかんせん、喧しい。 
  
 ロトムの主張を無視しながら歩く中、ふと先ほどジョーイさんが言っていたことを思い出す。 
  
 せっかく喋れるんだし、本人──というか、本ポケモンに聞いてみることにする。 
  
  
 しずく「ロトム、貴方脱走ポケモンなんですよね?」 
  
  「…ギクッ!! ち、違うロト…」 
  
 しずく「今ギクッって言いましたよね……」 
  
  
 今日日、図星を言い当てられて本当に「ギクッ」なんて言う人……どころか、ポケモンに出会うとは……。 
  
 ……いや、かすみさんは言うかも。 
  
  
 しずく「それで、どこから逃げてきたんですか?」 
  
  「も、もしかして、ボクを“おや”に返すロト…?」 
  
 しずく「当たり前ではありませんか……ポケモンセンターにいつまでも預けておくわけにもいかない、逃がすわけにもいかないとなったら、持ち主に返す以外ないでしょう」 
  
  「ま、ままま、待って欲しいロト!!! ボクをしずくちゃんの手持ちに加えて欲しいロト!!!」 
  
 しずく「……すごく嫌なんですが」 
  
  「ボク強いロト!!! 絶対戦力になるロト!!! だから、お願いロト!!!」 
  
  
 確かに強いのは嫌というほど知っているけど……。 
  
1002Res/2130.98 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20