815: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/08(木) 10:34:21.23 ID:S2FBcmzU0
  
 当たり前だが、この世界でポケモンと全く無関係に生きるというのは不可能なはずだ。 
  
 程度の問題であって、ゼロではない。 
  
  
 善子「ポケモンのことを実際に自分の目で見て、知ることは教育の上でも重要だと私は考えていて──」 
  
 菜々父『それは貴方の考えでしょう』 
  
  
 ぴしゃりと返される。 
  
 ……怯むな。 
  
  
 善子「ローズシティと言えば、この地方のモンスターボール生産の98%を占めていますよね? モンスターボール事業に関わることになれば、ポケモンの知識が重要に──」 
  
 菜々父『逆にお聞きします。この地方でポケモンによって起こる事件・事故の発生件数がどれほどのものか……博士ならご存じですよね?』 
  
 善子「それ……は……」 
  
 菜々父『並びにローズではそのような事件・事故がどれだけ少ないかも』 
  
 善子「…………」 
  
  
 ポケモンが街中にほとんどいないというのは裏を返せば、ポケモンによる事件や事故は格段に少ない。 
  
 そりゃそうだ。居ないのだから、起こるはずがない。 
  
  
 菜々父『その上でお訊ねします。娘を危険な目に遭わせたくない。だから、ポケモンと距離を置かせる。そう考える私の考えはおかしいでしょうか?』 
  
  
 ──極端だ。そう思った。 
  
 だけど、親が子を守るための方便として、これ以上のものはなかった。 
  
  
 善子「……仰る通りだと思います」 
  
 菜々父『わかっていただけたなら、幸いです』 
  
 善子「いえ……」 
  
 菜々父『この度は本当に、申し訳ございませんでした』 
  
 善子「いえ……こちらこそ、確認不足でいらぬご心配をお掛けしてしまい、申し訳ございませんでした……」 
  
 菜々父『とんでもないです』 
  
  
 思わず、下唇を噛む。 
  
 私は、こんなことが言いたいんじゃないのに。 
  
  
 善子「……あの」 
  
 菜々父『なんでしょうか』 
  
 善子「最後に……菜々さんとお話させてもらえませんか……」 
  
 菜々父『わかりました』 
  
  
 菜々のお父さんの了承の言葉のあと、 
  
  
 菜々『ヨハネ……博士……っ……』 
  
  
 菜々の声が聞こえてきた。震える、菜々の声。 
  
  
 善子「菜々……」 
  
 菜々『ご迷惑おかけして……申し訳……ございません……。……私には、まだ……ポケモンは……早かった……みたい、です……』 
  
 善子「……っ……!!」 
  
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