814: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2022/12/08(木) 10:33:14.34 ID:S2FBcmzU0
  
 善子「は、はい……間違いありません」 
  
 菜々父『この度は、娘がご迷惑をおかけして申し訳ございません』 
  
 善子「はい……? い、いえ、ご迷惑だなんて……」 
  
 菜々父『いえ、ギリギリになって、旅立ちのお断りの連絡を入れることになってしまって、申し訳ない……』 
  
 善子「……は?」 
  
  
 今、なんて言った……? 
  
 旅立ちを断る……? 
  
  
 善子「え、ち、ちょっと待ってください、どういうことですか……!?」 
  
 菜々父『今回、娘が勝手に博士に連絡を入れて、旅立ちの約束をしてしまったと伺いまして』 
  
 善子「……な……」 
  
  
 完全に予想外だった。 
  
 菜々は15歳という年齢でありながら受け答えもしっかりしていて、よく出来た子だったから、てっきり保護者とも話がついているんだと思い込んでいた。 
  
  
 菜々父『直前の連絡になってしまったことは、私たちの監督不行き届きに他なりません。本当に申し訳ない』 
  
 善子「ち、ちょっと待ってください……!」 
  
 菜々父『なんでしょうか』 
  
 善子「菜々は……菜々さんはなんと言ってるんですか……!?」 
  
  
 確かに親の了解を取っていなかったのはまずい。とはいえ、話が一方的すぎる。 
  
 私はずっと菜々がどれだけ旅を楽しみにしていたのか知っている。期待を、希望を、夢を、全て聞いてきた。 
  
 それなのに、二の句を継がせずに、旅に出させないという話になっているのは、あまりに急すぎる。 
  
 だけど、菜々の父親は、 
  
  
 菜々父『娘の意見は関係ありません』 
  
  
 その一言で切り捨てた。 
  
  
 善子「な……」 
  
 菜々父『我が家の教育方針では、ポケモンとは関わる必要はないと考えています』 
  
 善子「ポケモンと関わる必要がないって……」 
  
 菜々父『菜々はスクールでも主席。私たちもこの子の未来には期待しています。学校を卒業して、ローズの企業に就職すれば、ポケモンと関わらなくてもそこまで問題はないはずです』 
  
 善子「…………それは」 
  
  
 確かにローズシティにはそういう人が少なくない。 
  
 人口も多く、他の街に比べると、街中にいるポケモンは少ない方で、このオトノキ地方でも、一生涯ポケモンを持たずに暮らす人間が最も多いと言われている。 
  
 安全管理が徹底しているから、野生のポケモンに至ってはほぼゼロと言って差し支えないほどに少ないのがローズシティという街なのだ。 
  
 ポケモンを排除しようとしているのではない。人が多いからこそ、ポケモンとの住み分けをしっかりし、お互いの領域を守る。そういう理念で動いている街。 
  
  
 菜々父『それなのに、わざわざポケモンと旅に出るなんて、危険な真似をさせたがる親がいますか?』 
  
 善子「…………」 
  
  
 言葉に詰まる。 
  
 だけど、ダメだ。ここで何も言い返さなかったら──菜々の夢がここで終わってしまう。 
  
  
 善子「で、ですが……ローズもポケモンの力を全く借りていないわけじゃないはずです」 
  
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