2:名無しNIPPER[saga]
2024/05/04(土) 01:19:02.57 ID:3fwRECJNO
いつの世も戦いは終わらない。命が世界に在る限り、争いは必ず発生する。
世界とは、命とはそういうものだ。闘争の中で生き続け、爛々と輝くもの。それこそが生命という灯火。
世界を焼き尽くし、燃え尽きるまで。闘争の日々に終わりは無い。
故に。戦争を生業とする職業の需要は尽きず、戦争に全てを奪われる被害者も後を絶たない。
彼もまた、その被害者の一人だった。
故郷を戦火に焼かれ、家族を喪い。身寄りの無い幼子は、物心が付く頃には既に奴隷として売り払われた。
買い手が付かず廃棄処分が間近に迫る少年を、一人の傭兵が端金で買い叩いたのだ。
まあ。この世界では売れ残った奴隷を買い集め少年兵として仕立て上げ、捨て駒とすることなど珍しくもないのだが。
野垂れ死ぬか戦場で安い命を無為に散らすか。それだけの違いである。
捨て駒一号となった少年に、名前は無かった。故郷と共に燃え尽きた、と言った方が正しいかもしれない。
貧困層に生まれた彼には、自身を証明し得る手段が家族しか無かった。それが全て荼毘に付し塵と消えたのだ。
今の彼は戦火に焼かれ、微かに残った燃え滓でしかない。風に吹かれて消えるような小さく弱々しい種火だ。
だったのだが。何の因果か、それとも奇跡か。消える運命にあった種火は燃え上がり、自身を買い叩いた主人さえ焼き捨てた。
幾多の戦場を越え、力と技術を磨いた少年は、とある酒宴にて反旗を翻す。
そして。悉くを弑した後に、姿を消した。
彼には名前は無く、過去も無い。あったのは、主人から与えられた仮初の身分だけだ。
それは叛逆と共に炎に消えた。そのため、彼が行方を晦ませても追跡はされず、晴れて自由の身分となる。
しかし、闘争の日々を生きていた者に、平穏な生活が馴染むはずもなく。
数日もしないうちに、少年は再度戦火に身を投じた。
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